魅惑の巴里

『魅惑の巴里』の魅力

『魅惑の巴里』（Les Girls）は1957年に公開されたアメリカのミュージカル・コメディ映画です。この作品の監督を務めたのはジョージ・キューカーで、主演にはジーン・ケリーやミッツィ・ゲイナーが名を連ねています。映画は、視点を変えることで同じ出来事を異なる角度から描写する斬新な構成が特徴で、黒澤明の名作『羅生門』に通じるものがあります。

受賞歴と評価

映画は第15回ゴールデングローブ賞で、ミュージカル・コメディ部門の作品賞及び主演女優賞を受賞しました。特に主演女優のケイ・ケンドールの演技が評価され、高い評価を得た証です。また、第30回アカデミー賞では、オーリー＝ケリーによるデザインが評価され、デザイン賞が与えられました。これらの受賞は、映画がその時代において重要な作品であったことを示しています。

ストーリーの概要

物語は、元踊り子シビルが、同じく元踊り子のアンジェルから名誉毀損で訴えられるところから始まります。シビルが踊り子時代を綴った暴露本に書かれた内容が問題となり、彼女の主張とアンジェルの主張が対立します。シビルは、アンジェルが現在の夫・ピエールと婚約中に、座長のバリーと恋に落ちて自殺未遂をしたと主張。しかし、アンジェルは、実はシビルがその恋愛の中心で、自殺を図ったのもシビルであると反論します。

物語の展開は、元座長バリーが登場することでさらに複雑化します。バリーは、自身の心臓病を偽り、シビルとアンジェルの結婚を画策していたことを明らかにします。この4人の相関関係がどのように展開していくのか、一方ではシビルとアンジェルの証言が相反し、物語は迷宮入りする様相を呈します。

結末とその意味

最終的に、裁判はアンジェルが告訴を取り下げる形で終息を迎え、シビルとアンジェルは和解します。ただし、物語に残された疑問は多く、バリーが運転する車には、以前の裁判での出来事を冗談混じりに質問するジョイの姿がありました。それは、劇中で一体何が真実だったのかという問いかけを残します。最終的には、三者三様の物語の中で何が真実かは、自身の判断に委ねられることとなります。

登場人物とキャスト

• - バリー・ニコルズ: ジーン・ケリー演じる踊り子一座「レ・ガールズ」の座長。彼のダンスと振付が作品の核心をなします。
• - ジョーン（ジョイ）・ヘンダーソン: ミッツィ・ゲイナー演じる、アメリカ人の踊り子。
• - シビル・レン: ケイ・ケンドール演じるイギリス人の踊り子で、物語の中心人物として展開します。
• - アンジェル・デュクロ: タイナ・エルグ演じるフランス人の踊り子。
• - ピエール・デュクロ: ジャック・ベルジュラク演じるアンジェルの夫。
• - ジェラルド・レン卿: レスリー・フィリップス演じるシビルの夫。

『魅惑の巴里』は、ミュージカルとしての楽しさと同時に、複雑な人間関係を描き出した作品であり、今なお多くの人に愛されています。

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