魔法使いハウルと火の悪魔

ダイアナ・ウィン・ジョーンズによって1986年に発表されたファンタジー小説『魔法使いハウルと火の悪魔』は、読者を魅惑的な魔法の世界へと誘います。1997年には西村醇子による日本語訳が出版され、日本でも広く知られるようになりました。この物語は、ある学校での作者と生徒たちの会話がきっかけで生まれました。一人の少年が「動く城の話を書いてください」とリクエストしたことから、このユニークな物語の構想が始まったのです。

2004年には、スタジオジブリによってアニメーション映画『ハウルの動く城』として映像化され、さらに多くの人々に愛される作品となりました。映画は原作を基にしつつも、独自の解釈が加えられており、両者を比較することで作品の多面的な魅力を楽しむことができます。

あらすじ

物語の舞台は、七リーグ靴や姿隠しのマントが存在する魔法の国、インガリーです。この国では、おとぎ話の定型として、三人兄弟の長男や長女は運試しに失敗するという迷信が信じられています。帽子屋を営むハッター家の長女ソフィーも、その迷信を深く信じていました。

街では「荒れ地の魔女」や、丘陵地帯に現れた「動く城」に住む魔法使いハウルの噂が広まっていました。ソフィーが学校を卒業する年に父親が亡くなり、多額の借金があることが判明します。これにより、ソフィーは帽子店で働き、妹たちはそれぞれ別の場所で奉公することになりました。人と接することなく帽子を作り続けるうちに、ソフィーは次第に心を閉ざしてしまいます。

ある日、店に現れた荒れ地の魔女によって、ソフィーは90歳の老婆に変えられてしまいます。店を離れたソフィーは、丘陵地帯でハウルの動く城に転がり込み、掃除婦として働くことになります。

登場人物

ハッター氏

インガリーの町で帽子店を営んでいましたが、ソフィーが学校を卒業する年に急死。娘たちのために多額の借金を残していました。

ソフィー・ハッター

ハッター家の長女で18歳。赤銅色の髪を持っています。長男や長女は成功できないという迷信を信じており、内向的な性格です。父親の死後、帽子店で働いていましたが、荒れ地の魔女に呪いをかけられ老婆に変えられてしまいます。その後、ハウルの動く城で掃除婦として働くことになり、積極的な性格へと変化します。また、無意識のうちに言霊の魔法を使っていたことが判明します。

ハウル (ハウエル・ジェンキンス)

動く城に住む魔法使い。街では「美女の心臓を喰らう」と恐れられていますが、実際は善人です。容姿に強いこだわりを持ち、浪費癖があるため金銭には困窮しています。火の悪魔カルシファーと契約しており、異世界（イギリス・ウェールズ）から来た人物です。物語の一節から、27歳前後であることが示唆されています。

レティー・ハッター

ハッター家の次女で17歳。黒髪の美人で、多くの男性から求婚されています。パン屋「チェザーリ」で働きますが、後に魔法使いの修行をすることになります。

マーサ・ハッター

ハッター家の三女で15歳。金髪で、出世する運命にあるとされています。魔法の修行に出ますが、レティーと入れ替わり「チェザーリ」で働くことになります。マイケルの恋人です。

ファニー・ハッター

ハッター氏の後妻で、ソフィーが店を離れた後、店を畳んでお金持ちと再婚します。

フェアファックス夫人

ファニーの友人で魔法使い。蜂蜜好きで、蜂を飼っています。

マイケル・フィッシャー

ハウルの弟子で15歳。孤児でしたが、動く城で働くことになり、ハウルの弟子となりました。カルシファーと共にお金を貯めようとしています。

カルシファー

火の悪魔で、元は流れ星でした。ハウルと契約しており、動く城を動かすための魔力を提供しています。

サリマン（ベン・サリヴァン）

王室付きの魔法使いで、荒れ地の魔女の始末を命じられましたが、行方不明になります。異世界から来た男性です。

ジャスティン王子

王様の弟で、サリマンを捜索中に消息を絶ちます。

キャトラック伯爵

ジャスティン殿下の捜索に向かいましたが、女性と駆け落ちします。ソフィーに決闘の魔法を依頼します。

王様

インガリー国の若い王様で、自分の地位を鼻にかけています。

ヴァレリア王女

王様の娘で、まだ赤ん坊です。

ペンステモン夫人

引退した魔法の先生で、ハウルとサリマンの恩師です。

パーシヴァル

犬と人間の間を変化する人物で、気弱な性格です。

ミーガン

ハウルの姉で、ガレスの妻です。

ガレス

ハウルの義兄で、ミーガンの夫です。

ニール

ハウルの甥で、ハウルを「困りもんのおじさん」と思っています。テレビゲームが好きです。

マリ

ハウルの姪です。

アンゴリアン

ニールの学校の先生で、美人です。

かかし

荒れ地の生け垣に引っかかっていたカブ頭のかかしで、ソフィーを追いかけます。

荒れ地の魔女

ソフィーに呪いをかけた魔女で、ハウルの心臓を狙っています。

姉妹編

『魔法使いハウルと火の悪魔』の姉妹編として、『アブダラと空飛ぶ絨毯』、『チャーメインと魔法の家』が出版されています。これらの作品にもハウルとソフィーが登場し、その後の様子が描かれています。日本では、これらも「ハウルの動く城」シリーズとして販売されています。

この小説は、登場人物たちの成長と変化、そして魔法と現実が交錯する世界観が魅力です。読者は、ソフィーが老婆から再び若返る過程や、ハウルとの関係の進展を通じて、人生の多様な側面を感じることができるでしょう。

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