鰻のせいろ蒸し

鰻のせいろ蒸し：柳川が育んだ伝統の味

福岡県柳川市で生まれた「鰻のせいろ蒸し」は、地元の人々に愛され続ける郷土料理です。単なる鰻料理ではなく、柳川の歴史や文化、そして人々の知恵が詰まった一品と言えるでしょう。

せいろ蒸しの製法

鰻のせいろ蒸しは、独特の製法で作られます。まず、通常より硬めに炊いたご飯に、甘辛いタレをしっかりと染み込ませます。このご飯をせいろ（蒸籠）に敷き詰め、その上に香ばしく焼き上げた鰻の蒲焼と、彩り豊かな錦糸卵を乗せます。

そして、再びせいろで蒸し上げることで、ご飯、鰻、卵が一体となり、それぞれの素材の旨味が凝縮されます。蒸すことで鰻はふっくらと柔らかくなり、タレの風味がご飯全体に広がり、食欲をそそる香りが立ち上ります。

柳川と鰻の深いつながり

柳川は、江戸時代から鰻の産地として知られていました。柳川藩の時代には、鰻は貴重な財源の一つであり、地域経済を支えていました。有明海に面した柳川は漁業も盛んであり、漁師たちは冷めにくい調理法としてせいろ蒸しを好んで食していました。

武士の町、柳川ならではの調理法

柳川は武士の町でもあり、鰻の調理法にも独特の文化が反映されています。切腹を連想させる「腹開き」を避け、「背開き」で調理されるようになったのは、江戸の文化の影響です。

また、鰻の焼き方にも特徴があります。一般的に、鰻を蒸してから焼く関東風とは異なり、柳川では鰻を蒸さずに、直接タレを付けて焼き上げる関西風の焼き方が用いられます。さらに、串を打たずに鉄の格子の上に乗せて焼くことで、均一に火が通り、香ばしく仕上がります。

受け継がれる伝統の味

鰻のせいろ蒸しは、柳川の人々の生活と深く結びつき、長年にわたって受け継がれてきた伝統の味です。その製法や背景には、柳川の歴史や文化、そして人々の知恵が息づいています。柳川を訪れた際には、ぜひ本場の鰻のせいろ蒸しを味わってみてください。

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