鳥を持つ子供

『鳥を持つ子供』（独: Das Kind mit dem Vogel、英: Boy with Bird）は、バロック期を代表する画家ピーテル・パウル・ルーベンスが手掛けた油彩肖像画です。この作品は、オーク板に描かれ、2つの段階を経て完成されました。

最初の段階では、1614年頃に2枚の水平な板に子供の頭部が描かれました。その後、およそ15年後の1629年以降に画面の左側が拡張され、子供の手と鳥が描き加えられました。現在、この作品はベルリンの絵画館に所蔵されています。

ルーベンスは肖像画家としても名を馳せていましたが、実物大の子供の肖像画は非常に少ないです。この作品のモデルは、当初少女と考えられていましたが、ルーベンスの息子アルベルト（1614年生まれ）または甥のフィリップ（1611年生まれ）である可能性が高いとされています。ベルリン絵画館では、子供の年齢と制作時期から、モデルをフィリップと推測しています。

この絵画は、制作過程が二段階に分かれているため、拡大部分と本来の部分で仕上がりや顔料が大きく異なります。当初の頭部部分はルーベンス自身の手によるものとされていますが、拡大部分は工房の助手によって描かれたと考えられています。

ルーベンスは、この作品を習作として制作した可能性があり、工房で使用するための「羽根のある天使」の習作だったという見方もあります。実際に、この作品に描かれた子供は、『花環の聖母』でプットとして使用されています。当初は工房内での使用を想定していた頭部部分が、追加部分によって売却可能な作品へと発展したと考えられます。

当初、習作として制作されたこの作品は、おそらくモデルを直接前にして写生されたもので、子供は自発的なポーズで描かれています。子供が鳥と遊ぶというモチーフは、古代から存在し、キリスト教美術にも頻繁に登場します。鳥は、魂や生命の象徴とされ、「聖母子」の絵画では、イエス・キリストが鳥を持つ姿で描かれることがあり、それは彼の死と復活を暗示するとされています。ただし、ルーベンスが本作を制作した際に、そのような寓意を意図していたかどうかは不明です。

この絵画は、ルーベンスの制作過程や彼の工房の役割を理解する上で貴重な資料となっています。また、子供の肖像画というジャンルにおいて、この作品が持つ芸術的な価値と歴史的な意味は非常に大きいと言えるでしょう。

参考文献

有川治男・重延浩・高草茂編集『NHK ベルリン美術館1 ヨーロッパ美術の精華』、角川書店、1993年刊行　ISBN 4-04-650901-5

外部リンク

ベルリン絵画館公式サイト、ピーテル・パウル・ルーベンス『鳥を持つ子供』 (ドイツ語、英語)
* Web Gallery of Artサイト、ピーテル・パウル・ルーベンス『鳥を持つ子供』(英語)

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