鵜崎庚午郎

鵜崎庚午郎（うざき こうごろう）は、1870年4月17日（明治3年3月17日）に現在の兵庫県姫路市で生まれた、明治から昭和初期にかけて活躍した日本のキリスト教メソジスト派における重要な人物です。牧師としてだけでなく、教育者や伝道者としても知られています。父は、かつて姫路藩士であり、漢学を修めた鵜崎久平でした。

若き日、鵜崎庚午郎は信仰の道に進みます。1887年、アメリカ南メソジスト監督教会から派遣された宣教師ウォルター・R・ランバスから洗礼を受け、キリスト教徒となりました。その後、牧師となることを志し、関西学院に入学。そこで宣教師J.C.C.ニュートンから熱心な指導を受け、信仰を深めるとともに、伝道者としての訓練を積みました。

神学校での学びを終えた鵜崎は、メソジスト教会の牧師として、神戸、広島、大阪、京都など日本の主要都市で伝道活動を行いました。その誠実な人柄と情熱的な働きは多くの人々に影響を与えました。教会での活動と並行して、教育分野にも貢献しました。彼は第三高等学校や母校である関西学院の教授を務め、次世代の育成に力を注ぎました。

教会組織内でも指導力を発揮しました。1912年には、日本メソジスト教会の公式機関誌であった『護教』の主筆（編集長）を務め、教会の方針や教えを広く伝える役割を担いました。また、1914年には九州にある鎮西学院の院長（校長）に就任し、学校経営においてもその手腕を発揮しました。

鵜崎庚午郎の生涯で最も特筆すべき功績は、日本のキリスト教史において極めて重要な役割を果たした点です。彼は、日本人として初めて日本メソジスト監督教会の監督（bishop）に選ばれました。これは、黎明期から外国人宣教師が中心であった日本の教会運営において、日本人指導者が最高位に就いた画期的な出来事でした。1920年、彼は日本メソジスト教会の第3代監督に就任し、その職責を全うするため、1930年に亡くなるまで教会運営の重責を担いました。

1930年4月3日、鵜崎庚午郎は脳溢血のため61歳で急逝しました。その突然の訃報は、日本のキリスト教界に大きな衝撃を与えました。彼の生涯は、明治から昭和初期という激動の時代における日本のキリスト教、特にメソジスト派の発展と自立に尽くした軌跡そのものでした。彼の遺体は、東京の青山霊園に葬られました。

鵜崎庚午郎は多忙な教会活動や教育活動の傍ら、著述も行いました。彼の著作としては、彼に洗礼を授けたランバス宣教師の生涯を綴った『藍巴斯先生略伝』（1893年）や、没後に出版された遺稿集『弟山遺文 故鵜崎庚午郎博士遺稿集』（1933年）があります。これらの文献は、彼の思想や当時の日本の教会状況を知る上で貴重な資料となっています。

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