鷲ノ木遺跡

鷲ノ木遺跡：縄文時代の環状列石が語るもの

鷲ノ木遺跡は、北海道茅部郡森町鷲ノ木町に位置する縄文時代後期の遺跡です。約4,000年前の環状列石と竪穴墓域を中心に、配石遺構や竪穴建物跡が発見されており、当時の人々の生活や精神文化を今に伝える貴重な遺産として、2006年に国の史跡に指定されました。

遺跡の概要

遺跡は、内浦湾（噴火湾）から約1キロメートル内陸に入った場所に位置しています。環状列石と竪穴墓域は、桂川の支流である上毛無沢川と下毛無沢川に挟まれた標高68メートルの舌状台地の南西部に存在します。この場所は、縄文時代の人々が生活の場としてだけでなく、精神的な営みを行う場としても重要視していたと考えられます。

環状列石の構築時期と前後する遺構が、環状列石から南に約20メートル低い台地からも発見されており、当時の集落の広がりや変遷を知る手がかりとなっています。環状列石内からは遺物の出土が少ないことから、祭祀などを行った後に整理整頓が行われた可能性も指摘されています。

遺跡の沿革

2002年：鷲ノ木4遺跡の発掘調査中に、工事用道路の法面から遺物が採集され、鷲ノ木5遺跡として登録
2003年：環状列石の存在が明らかになり、南側で発見された竪穴墓域と合わせて遺跡の重要性が確認
2005年：北海道教育委員会が日本道路公団（現：東日本高速道路）に遺跡保存を依頼。トンネル工法による高速道路整備と遺跡の現状保存で合意
2006年：鷲ノ木5遺跡と鷲ノ木3遺跡を統合し、鷲ノ木遺跡として国の史跡に指定
2012年：80,136.37平方メートルの土地が追加指定され、指定区域の合計面積は82,856.87平方メートルに

環状列石の詳細

環状列石は、直径30〜40センチメートルの石が二重の環状に並べられた構造を持ちます。外側の環では石の長軸方向を連ねて配置し、内側の環では石の長軸方向を中心部に向けて配置するという特徴的な造りとなっています。中央部には小規模な楕円形の配石があり、使用された石の総数は602個に及びます。環状列石全体の大きさは、外環で36.9メートル×33.8メートルです。

竪穴墓域の詳細

環状列石の南約5メートルの場所に位置する竪穴墓域は、11.6メートル×9.2メートルの範囲に広がります。この竪穴内には、7基の土坑と4基のピット（小さな穴）が存在します。土坑の大きさは直径1メートル〜2.3メートル、深さは30センチメートル〜90センチメートルで、出土した遺物や土の堆積状況から、墓として使用されていたと考えられています。この竪穴墓域は、縄文時代後期後葉から晩期初頭にかけて道央や道東で造られた周提墓（環状土籬）の起源を考える上で重要な遺構とされています。

鷲ノ木遺跡は、北日本における縄文時代の墓制や祭祀を知る上で重要なだけでなく、当時の人々が自然と共生し、精神文化を育んでいた様子を垣間見ることができる貴重な場所です。今後の調査研究によって、さらなる発見が期待されています。

関連情報

北海道・北東北を中心とした縄文遺跡群
縄文時代の遺跡一覧
北海道・東北地方の史跡一覧
道央自動車道
ストーンサークル

外部リンク

国指定史跡鷲ノ木遺跡出土の環状列石（北海道茅部郡森町）

もう一度検索