麻生徹男

麻生 徹男について

麻生 徹男（あそう てつお、1910年1月7日 - 1989年7月11日）は、昭和時代に活躍した医師であり、医学博士としての地位を持っていました。彼は大日本帝国陸軍の軍医として、日中戦争及び太平洋戦争に従軍し、その経験をもとに著作を執筆しました。「慰安婦問題」に関連した最初の人物の一人であり、彼の記録や証言は、今でも多くの議論の対象となっています。

略歴

麻生は福岡県で産婦人科医の家庭に生まれました。福岡中学校（現在の福岡県立福岡高等学校）及び福岡高等学校を経て、1935年に九州帝国大学医学部を卒業しました。すぐに医籍に登録し、同大学の副手として教育に携わります。1937年には大日本帝国陸軍に召集され、軍医として14号兵站病院に配属され、その後中国の上海や南京へ転任しました。

1939年には、「花柳病ノ積極的予防法」という報告書を作成し、これは戦後の慰安婦問題に関して書かれた多くの著作に引用されることとなります。1940年には軍医中尉に昇進し、その後も戦地においてマラリア対策に従事します。1946年に復員後は、麻生産婦人科医院を再開し、1980年まで院長を務めました。彼はまた、福岡助産婦学校長や福岡YMCAの主事代行、福岡女学院理事としても活動しました。

著作と戦争体験

麻生は戦後、自身の戦争体験をさまざまなメディアを通じて発表しました。特に、1957年には博多の雑誌に証言が掲載され、1977年には不許可写真に関連する作品に写真を提供しました。また、1986年には私家本『戦線女人考』を出版し、ここでは女性の戦争体験が語られています。作家の森崎和江はこの本に深く感銘を受けたと述べています。また、彼の遺稿は1990年に『軍医官の戦場報告意見集』に収められています。

慰安婦問題との関連

麻生の経験は、慰安婦問題に直結しています。千田夏光の著作『従軍慰安婦』には彼へのインタビューが含まれており、彼は当初慰安所が演芸の場だと思っていたと語っています。一方、彼の娘で医師の天児都は、千田の記載内容に多くの誤りがあると指摘し、家族としてこの議論に積極的に関与してきました。特に、千田が麻生の論文や発言を誤解し、強制連行の責任者のように描いたことが問題視されています。

天児は、麻生が戦時中に撮影した写真が現在中国によって無断使用され、慰安婦問題に関連して引用されていることについても疑問を呈しています。このことから、彼女は日本の慰安婦問題がどのように誤解され、再生産されてきたかについて広く知られるように努めています。

家族と影響

麻生の次女である天児都は医師としても活動しており、従軍慰安婦に関する問題について言及しています。彼女は自身の経験や父の遺志を受け継ぎ、この問題についての正確な情報提供に努めています。麻生の人物像は、彼自身の医師としての業績だけでなく、慰安婦問題に関する見解やその後の影響を通じても強く形成されています。彼は1989年に逝去しましたが、その遺産は今なお戦争と慰安婦問題について考えさせる素材となっています。

麻生徹男の生涯は、医療と戦争、さらには社会的な議論の交点に立つ重要な側面を持っており、彼の経験や著作は、未来へ向けた重要なメッセージを秘めています。

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