黄色い風土

『黄色い風土』

松本清張の長編推理小説『黄色い風土』は、1959年から1960年にかけて『北海道新聞』で連載され、1961年に講談社から刊行されました。物語は、戦時中に形成された秘密組織による謀略が絡む連続殺人事件を描いています。雑誌記者の若宮四郎が事件を取材する中で、様々な人々の運命と秘密が交錯していきます。

あらすじ

新婚旅行のために出発する準急「いでゆ」が賑わう東京駅。雑誌記者の若宮四郎は、熱海に向かう途中、新郎新婦の姿に目を留めました。しかし、熱海の一流ホテルで待っていた彼のもとに、見知らぬ青年が突然訪れます。「洋服をお持ちしました」という言葉が不気味な予感を抱かせる中、翌日、青年が宿泊していた部屋に詰めていた新婚の夫が自殺したという衝撃的なニュースが入ります。

警察はこれを自殺として扱いますが、若宮は納得できず、その真相を追い始めます。彼は自ら行動し、銀座のバーで働く少女由美の失踪や、その夫の溺死体の発見に直面します。北海道人なら知っている秘密の世界に足を踏み入れた若宮は、次々と襲いかかる謎に挑み続けます。

登場人物

• - 若宮四郎: 週刊誌の記者で、本作の主人公。事件の真相を追う。
• - 木谷啓介: 若宮の上司で、彼を支える編集長。
• - 島内輝秋: 評論家として登場する有名なキャラクター。
• - 由美: 銀座のバーで働く少女で、事件に巻き込まれる。
• - 長谷川吾市: 由美の叔父で、ギャンブル好き。

物語は次第に複雑さを増し、若宮は失踪した由美や他の登場人物たちの背後にある秘密組織の影に辿り着きます。彼は次々と見えない暗黒の力に挑戦し、自分自身の運命をも揺さぶられることになります。やがて明らかになる衝撃の真実は、彼の探偵人生に大きな影を落とします。

映画化とテレビドラマ

『黄色い風土』は、1961年に東映によって映画化、1965年にはテレビドラマとしても放送されています。映画版では小樽での事件がカットされ、登場人物の関係が簡略化されるなど、原作とは異なるアレンジが加えられました。同様に、テレビドラマ版も多くの俳優たちによって取り上げられ、様々な演出が施されています。

作品の背景と評価

本作は、松本清張自身があまり好まなかった作品とされており、単行本化の際には多くの内容が削除されたことも知られています。研究者の見解によると、連載時の『黒い風土』は、組織の中での個人の葛藤が描かれており、清張らしさが際立っていたとされています。対して、単行本化された『黄色い風土』では、物語の進行や登場人物の深みが薄れてしまったとの批評も存在します。

このように『黄色い風土』は、松本清張の作品の中でも特異な位置を持つ作品であり、秘められた社会の暗い側面を鋭く描き出した作品として、多くの読者に強い印象を与え続けています。

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