黒田三郎

黒田三郎（くろだ さぶろう）

日本の詩人（1919年（大正8年）2月26日生 - 1980年（昭和55年）1月8日没）。難解と思われがちだった現代詩を、平易かつ日常に根差した言葉で表現することで、詩の世界を多くの読者に開いた存在として知られています。

略歴

広島県呉市に生まれた黒田三郎は、海軍軍人であった父の退役に伴い、3歳からは父の故郷である鹿児島で育ちました。旧制鹿児島県立第一鹿児島中学校、旧制第七高等学校造士館を経て、東京大学経済学部を卒業しています。戦時中は、勤め先の会社からの派遣や現地召集により、南洋の島々で過ごす経験をしました。戦後、NHKに入局。1947年には詩誌「荒地」の創刊に参加し、詩や評論の発表を始めました。

詩風と活動

結核を患いながらも、黒田は市井の人々の生活や感情を、飾り気のない平明な言葉で詩に紡ぎ続けました。その詩風は、当時の詩壇において新鮮なものとして受け止められます。1955年（昭和30年）に刊行された最初の詩集『ひとりの女に』は、戦後を代表する恋愛詩集の一つと称され、第5回H氏賞を受賞。続く詩集『小さなユリと』（1960年）では、妻の入院中に自身と幼い娘ユリとの二人暮らしの日常を瑞々しく、そして切実に描き出し、読者の深い共感を呼びました。

これらの作品を通じて、彼は個人的な体験や感情を普遍的なテーマへと高め、現代詩をより身近なものとすることに貢献しました。その他にも、『時代の囚人』（1965年）などの詩集や、評論集『内部と外部の世界』など、多岐にわたる著作を発表しています。

1969年にNHKを退職してからは、文筆活動に専念。また、詩壇の発展にも尽力し、1975年からは詩人会議の運営委員長を務めました。

黒田の詩作品は、その親しみやすい言葉遣いから、しばしば楽曲化されています。クラシックやフォークソングの作曲家によって曲が付けられ、広く親しまれました。例えば、赤い鳥による「紙風船」、高田渡による「夕暮れ」、小室等による「苦業」などがあります。

晩年と死

晩年まで創作活動を続けた黒田三郎は、1980年1月8日、下咽頭癌のため東京女子医科大学病院にて、60歳でその生涯を閉じました。

彼の残した詩は、今なお多くの人々に読まれ、その平明で深い表現は、現代詩の一つの到達点として評価されています。

主な著作

『ひとりの女に』（1954年）
『小さなユリと』（1960年）
『時代の囚人』（1965年）
『もっと高く』（1964年）
『悲歌』（1976年）
『死と死のあいだ』（1979年）

評論集に『内部と外部の世界』（1957年）などがあります。没後には、『黒田三郎日記』や『黒田三郎著作集』も刊行されました。

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