龍村仁

龍村仁（たつむら じん）

プロフィール

龍村仁は、1940年4月23日に兵庫県宝塚市で生まれ、2023年1月2日に老衰のため82歳で亡くなった、日本のドキュメンタリー映画監督です。元NHKディレクターであり、有限会社龍村仁事務所の代表を務めていました。

生い立ちとNHK入局

京都大学文学部美学科を卒業後、1963年にNHKに入局しました。報道局を経て教育局に配属され、フィルムドキュメンタリーの演出に携わるようになりました。

キャロル事件

1973年、龍村は人気ロックバンド「キャロル」に密着したドキュメンタリー番組を企画・制作しました。しかし、その内容がNHK上層部の意向にそぐわず、大幅な再編集を余儀なくされました。この出来事に憤慨した龍村は、NHK職員であった小野耕世と共に、ATGで映画『キャロル』を制作しました。この行動が原因で、NHKを解雇されるという事態に発展しました。この事件は「NHKキャロル事件」として知られ、当時の社会に大きな波紋を広げました。龍村は解雇の無効を求めて裁判を起こし、NHKと10年間争うことになります。

フリーの演出家として

NHK解雇後、龍村はフリーの演出家として活動を始めます。ドキュメンタリー映画『地球交響曲』シリーズをはじめ、数々のドラマ、CMなどの制作に携わりました。『地球交響曲』シリーズは、地球と宇宙、生命のつながりをテーマにした壮大な作品で、多くの人々に感動を与えました。

家族

龍村家は芸術一家としても知られています。祖父は皇室御用達の織物店「龍村美術織物」の創業者である龍村平蔵（初代）、父も二代目龍村平蔵、叔父も三代目龍村平蔵であり、姉はピアニスト／プロモーターの龍村和子、弟は画家・織物作家の龍村光峯、ヨガ指導者の龍村修です。

作品と著書

龍村は、ドキュメンタリー映画監督として数多くの作品を発表しました。代表作は以下の通りです。

ドキュメンタリー
『キャロル』
『OUR SONG and all of you (ライヴ・アット・武道館)』
『シルクロード幻視行』
『宇宙からの贈りもの～ボイジャー航海者たち』
『NTT DATAスペシャル「未来からの贈りもの～この星を旅する物語」』
『地球交響曲』シリーズ（第一番から第七番まで）
TVドラマ
『弦鳴りやまず』（1984年毎日放送）
CM
セゾングループ3分CM「ライアル・ワトソン篇」「野口三千三篇」

著書も多数出版しており、代表的なものとして以下が挙げられます。

『キャロル闘争宣言 ロックンロールテレビジョン論』
『ガイア・シンフォニー間奏曲』
『地球（ガイア）のささやき』
『地球（ガイア）をつつむ風のように』
『地球交響曲（ガイアシンフォニー）第三番魂の旅』

NHKキャロル事件の詳細

1973年2月28日、龍村は「ロックンロール・カーニバル」に出演したキャロルに衝撃を受け、彼らに密着したドキュメンタリー『キャロル』を制作しました。龍村は、キャロルとの出会いを戦後世代の問題として記録しようとしました。しかし、NHKは、番組の放送を許可しませんでした。NHK側は、キャロルの存在が「特殊すぎる」「客観的でない」「不良っぽく、若者にいい影響を与えない」などと主張しました。

龍村は、この決定に反発し、連日マスコミ関係者を集めて自主試写会を開催。外部雑誌に署名入りでNHKを批判しました。この事件は、社会問題として大きく取り上げられ、NHKは一部をカットした上で番組を放送することを提案しました。しかし、龍村はドキュメンタリーとしての完全な放映を主張し続けました。結局、NHKは番組を『ヤング・ミュージック・ショー』の一部として放送しました。これに対し、龍村はATGと提携して映画版『キャロル』を制作しました。この映画制作が、NHKの就業規則違反とみなされ、龍村は解雇されることになりました。

晩年と死

龍村仁は、2023年1月2日、老衰のため82歳でその生涯を閉じました。彼の作品は、今も多くの人々に感動を与え続けています。

参考文献

『世界大百科年鑑　1977』　平凡社、1977年
「キーマンズインタビュー 龍村仁さん」　　ビッグローブ、2002年1月7日
「対談　時空を超える出会い　龍村仁 vs 宇城憲治」（前編：季刊『道』159号／後編：季刊『道』160号）、どう出版、2009年。
キャロル『暴力青春 キャロル・最後の言葉』KKベストセラーズ、1975年。
永井晶子『イエスタディ '60'S~'80'S―音楽記者の取材ノートから―』CBS・ソニー出版、1989年
吉田豪『人間コク宝』コアマガジン、2004年
小野耕世「キャロルの時代」『団塊パンチ1～5号』飛鳥新社、2006年。

外部リンク

公式サイト

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