.euドメインについて
`.eu`は、
欧州連合(EU)およびその加盟国の組織や市民のために設けられた
国別コードトップレベルドメイン(ccTLD)です。
2005年12月7日に発足し、当初はサイバースクワッティング防止の観点から、
商標権者に限定した登録期間を設け、本格的な運用は
2006年4月7日から開始されました。
管理組織
`.eu`ドメインは、ベルギー、チェコ、スウェーデン、イタリアの各国のトップレベルドメインレジストリ運用者で構成されるコンソーシアムであるEURidによって管理されています。
設立と初期の登録
`.eu`トップレベルドメインは、
2005年3月22日に
ICANNによって承認され、同年
5月2日にインターネットのDNSルートゾーンに追加されました。EUは国家ではないものの、国際的な組織に対するトップレベルドメインの割り当ては過去にも例がありました(`.nato`など)。
登録希望者は、サンライズ期間中に登録を開始でき、この期間には
商標権や地理的な名前、企業名などの権利を証明する書類が求められました。この審査は、EURidによって承認された
プライスウォーターハウスクーパース・ベルギーによって行われました。これにより、多くの企業が自社の登録
商標をドメイン名として登録できました。企業や
商標向けの登録は
2006年2月7日に開始され、開始から15分間で27,949件、最初の1時間で71,235件もの申請が殺到しました。
一般登録開始時の混乱
2006年4月7日午前11時(CET)に、一般登録が開始されると、ドメイン登録を希望する人々が殺到し、登録事業者には大量の申請が集中しました。開始から4時間で70万件以上のドメインが登録され、
GoDaddyやDotsterなどの大手登録事業者は、大量の処理待ちとシステム負荷に悩まされました。中には、処理を早く終えた事業者が「列を飛ばす」ことを許可するほどの状況でした。
2006年7月には、200万以上の`.eu`ドメイン名が登録され、ヨーロッパでは`
.de`、`
.uk`に次ぐ第3位、世界では7番目に大きなドメインとなりました。
GoDaddyの創設者であるボブ・パーソン氏は、EURidによる一般登録プロセスを批判し、特に一部の登録事業者によるペーパーカンパニーの利用を問題視しました。パーソン氏は、これらの会社が実態のある事業者を登録するのではなく、新たに多数の「幽霊」登録事業者を作り出したと指摘しました。彼は、ニューヨークの同一住所と連絡先で登録された400もの会社が、`.eu`ドメインの一般登録を独占するために設立されたと主張しました。これにより、正規の登録事業者がドメインを取得できない状況が生まれました。EURidの広報担当であるパトリック・リンデン氏は、パーソン氏の批判に対し、各登録事業者が法的主体であることの確認を行っており、登録には1万ユーロの支払い義務があると反論しました。しかし、パーソン氏は法的主体の確認は形式的なものであり、容易に作れると指摘し、ドメイン登録サービスを提供する組織が実際にサービスを提供しているかを確認すべきだと主張しました。
`.eu`は
ポルトガル語で「私」を意味するため、一般登録開始後、
ポルトガル語利用者による登録が急増すると見られていました。実際に、
ポルトガル国民は`.eu`ドメインに登録できましたが、
ポルトガル語圏の
ブラジルやアフリカの一部では利用が不可能となっています。また、
ルーマニア語でも`eu`は「私」を意味するため、
2007年に
ルーマニアがEUに加盟した際には同様の現象が起こると予想されていました。
セカンドレベルドメインである`.europa.eu`は、EU機関用に予約されており、
2006年5月9日のヨーロッパ・デーに、多くの機関が`.eu.int`ドメインから`.europa.eu`ドメインに移行しました。また、
欧州中央銀行などの他の機関も`.eu`ドメインに移行しています。
参考
IANA Delegation Record for .EU
EURid - The European Registry of Internet Domain names
.eu domains by IP addresses
PWC Belgium's validation service for Eurid
EU to launch its own web domain (BBC)
Eu Won't Believe It: The Great .eu Domain Name Fiasco
No .eu domain for the Swiss (and Iceland, Liechtenstein and Norway) (The Register)
".eu": A New Internet Top Level Domain