007/美しき獲物たち

『007／美しき獲物たち』

『007／美しき獲物たち』（原題: A View to a Kill）は、1985年に公開されたスパイアクション映画で、ジョン・グレンが監督を務めました。この作品は、「ジェームズ・ボンド」シリーズの第14作目であり、イアン・フレミングの短編『バラと拳銃』が原作となっています。ロジャー・ムーアが演じたボンド役は、この映画が彼にとって最後の出演作であり、ムーアボンドの集大成とも言える一作です。

ストーリー概要

物語は、ソ連のスパイ003がアメリカ製の高性能ICチップを持ち出し、遭難したところから始まります。ボンド（ロジャー・ムーア）は、遺体から取り出したチップに異常を感じ、製造元のゾリン社を調査することとなります。このチップは、自身が核爆発によって発生する強力なEMPに耐えうる特性を持っていました。

ボンドは、競走馬を通じてゾリン社の秘密に迫るうちに、社長のマックス・ゾリン（クリストファー・ウォーケン）が、人工的に地震を引き起こし、シリコンバレーを壊滅させる計画を企てていることを知るのです。この計画が半導体市場の独占を狙ったものであることを突き止めたボンドは、ゾリンとその部下の女暗殺者メーデイ（グレイス・ジョーンズ）が、KGBとつながりがある元ナチスの科学者による実験を受けた異常発達児であることも明らかにします。

キャストと制作

本作には、主役ボンドのロジャー・ムーアのほかに、タニア・ロバーツ（ステイシー・サットン）、クリストファー・ウォーケン（マックス・ゾリン）、グレイス・ジョーンズ（メイデイ）など、豪華なキャストが揃いました。また、ムーアは撮影当時57歳であり、シリーズにおいて最も高齢でのボンド役を担った俳優です。そのため多くのアクションシーンではスタントマンが使用され、迫力が生み出されています。

音楽には、全盛期にあったデュラン・デュランが主題歌を担当し、これが大ヒットとなったことも本作の特徴です。ジングル・オープニングと印象的なテーマが新たなボンド映画のスタイルを形成しました。

アクションシーンとスタイル

本作では、スキーやスノーボードを駆使したアクション、カーチェイス、格闘、さらには飛行船を使ったスリリングな追跡劇などが多数組み込まれています。特に ブロデュースの優れたブロックバスターな要素が魅力的に演出され、観客を楽しませる要素が数多く含まれています。作風は、『オクトパシー』のコミカルな雰囲気から、再びシリアスなトーンへと戻ったことも見逃せません。

興行成績と文化的影響

『007／美しき獲物たち』は、制作費3000万ドルをかけて作られたにもかかわらず、全世界で1億5240万ドルの興行収入を上げる成功を収めました。また、アメリカでは1985年全米第10位の興行収入を達成したことからも、その人気の高さが伺えます。この成功により、ロジャー・ムーアのボンドは有終の美を飾ることとなりました。

この映画はまた、ボンドの冒険が一つの文化的現象として位置づけられるきっかけにもなり、シリーズ全体においても重要な作品とされています。ボンド映画の監督ジョン・グレンが生み出したスリリングな演出と視覚的な刺激感が、多くのファンに愛される理由となっています。

まとめ

『007／美しき獲物たち』は、ロジャー・ムーアがボンドを演じた最後の作品として、スパイアクション映画の金字塔として歴史に名を刻んでいます。視覚的な楽しみだけでなくストーリーやキャラクターの深みも感じられる一作であり、今もなお多くのファンに愛され続けています。

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