10月政変

10月政変（モスクワ騒乱事件）

1993年10月、ロシアは激しい政治的対立に見舞われました。この事件は「10月政変」または「モスクワ騒乱事件」と呼ばれ、当時のボリス・エリツィン大統領と、ルスラン・ハズブラートフ最高会議議長、アレクサンドル・ルツコイ副大統領を中心とする議会派勢力との間で発生した権力闘争でした。この対立の根本には、新憲法制定をめぐる深刻な意見の不一致がありました。

対立の激化

エリツィン大統領とハズブラートフ最高会議議長の間の緊張は、事件発生以前から高まっていました。1993年9月、ハズブラートフ議長はテレビを通じてエリツィン大統領を挑発する発言を行い、両者の対立は決定的となります。これに対し、エリツィン大統領は同年9月21日、人民代議員大会および最高会議の解散を命じる大統領令（大統領令1400号）を発布しました。これは、議会派勢力を排除し、自らの権力基盤を強化しようとするエリツィン大統領の強い意志を示すものでした。

議会派の反撃

エリツィン大統領のこの強硬な措置に対し、ハズブラートフ議長を中心とする議会派はただちに反撃を開始しました。最高会議は緊急会議を招集し、ルツコイ副大統領に大統領全権を委譲し、ルツコイ自身も「大統領」への就任を宣言しました。10月3日には、議会派勢力は最高会議ビルに立てこもり、事態は武力衝突へと発展します。この時、モスクワ市内では支持者によるデモ活動も行われ、一時的に騒然とした状況となりました。

武力衝突と終結

翌10月4日、事態を収束させるため、エリツィン大統領は軍に対し、議会派勢力が立てこもる最高会議ビルの制圧を命令しました。この命令により、議会派勢力は武力で排除され、ハズブラートフ、ルツコイら代議員たちは拘束されました。政府発表によると、この衝突による死者は187人、負傷者は437人でしたが、ロシア連邦共産党に近い筋からは、死者数は2,000人を超えたとする証言も出ています。

その後の影響

10月政変は、エリツィン大統領率いる大統領派の勝利という形で終結しました。その後、問題となっていた新憲法は1993年12月12日に国民投票で可決され、ロシアは新しい政治体制へと移行することになります。この事件は、ロシアにおける政治権力のあり方や憲法制定の重要性について、深い教訓を残すことになりました。また、ソ連崩壊後のロシア社会の不安定さを象徴する出来事としても、歴史に刻まれています。

関連項目

ソ連8月クーデター
カウンター・クーデター
* ロシア連邦憲法

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