10番目のミュー

尾崎亜美の『10番目のミュー』は、1985年9月18日にキャニオンレコードから発売された通算13作目のオリジナルアルバムです。このアルバムは、第27回日本レコード大賞において優秀アルバム賞を受賞し、その芸術性と音楽性が高く評価されました。

制作背景

前作『Plastic Garden』から約1年ぶりのリリースとなった本作は、尾崎亜美にとって特別な意味を持つ作品となりました。リリース間隔が通常よりも長くなった背景には、全国ツアーの実施によりアルバム制作に十分な時間を割けなかったこと、そして尾崎自身が全身麻酔を伴う大きな手術を受けていたという事情がありました。

アルバムのコンセプトは、手術中に尾崎が体験した不思議な感覚から生まれました。麻酔が効き始め、意識が上へと昇っていくような感覚を覚えた瞬間、「神話をテーマにしたアルバムを作ろう」というインスピレーションが湧き上がったと言います。手術後、尾崎は神話に関する書籍を読み漁り、アルバムの構想を深めていきました。

アルバムタイトルのヒントとなったのは、ギリシア神話に登場する学芸の女神たち「ミューズ」です。ゼウスとムネーモシュネーの間に生まれた9人の娘たちを指すミューズに、尾崎は「もしミューズの集まりに遅刻した10人目の女神がいたら面白いのではないか」というユニークな発想を加えました。主人公である「10番目のミュー」は、いたずら好きでドジでおっちょこちょい、失敗ばかりしているけれどどこか憎めない、そんな愛すべきキャラクターとして創造されました。アルバムには、現実世界を超えた超常現象のようなテーマの楽曲が多数収録されています。

ジャケットと収録曲

ジャケット写真には白い羽を付けた背中が写っていますが、これはオーディションで選ばれた19歳の女性のものです。18歳から20歳限定で募集したところ、ハーフのモデルをはじめ、年齢制限に当てはまらない他部署のディレクターなど、多くの人が集まり、大いに盛り上がったそうです。

収録曲の中には、他のアーティストに提供された楽曲も含まれています。A-2「天使のウィンク」は松田聖子、A-5「上海湾（BAY）物語」とB-1「冒険少年への誘（いざな）い」は松本伊代への提供曲です。

HQCD 紙ジャケット仕様

2013年11月20日には、高音質HQCDが紙ジャケットCD仕様で再発売されました。これにより、オリジナルアルバムの魅力をより高音質で楽しむことができるようになりました。

『10番目のミュー』は、尾崎亜美の創造性と音楽性が結実した、唯一無二の作品と言えるでしょう。神話をモチーフにした幻想的な世界観と、ユーモア溢れるキャラクター設定が、聴く者を魅了します。

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