11B97

11B97は、ソビエト連邦において1978年から1986年にかけて開発された核電気ロケットエンジンです。これは、当時のソ連が進めていた先進的な宇宙推進技術開発の一環として位置づけられます。

このエンジンの設計における主要な目標の一つは、非常に長い運用時間を実現することでした。具体的には、合計16,000時間の作動に耐えうる能力が求められていました。この長時間の稼働を可能にするため、搭載される原子炉は3年間にわたる運転寿命を持つように設計されていました。このような設計思想は、従来の化学ロケットでは不可能だった、長期間にわたる連続的な推力を必要とする深宇宙探査や軌道間移動といったミッションを想定していたことを示唆しています。

また、11B97は非常に大きなペイロードを輸送する能力を持つことも目標とされていました。設計上の仕様では、最大100トンもの重量物を地球の静止軌道（GEO）まで輸送することが可能であるとされていました。この能力は、大規模な宇宙構造物の建設や、静止軌道への超大型衛星の投入など、当時としては極めて野心的な宇宙計画への利用を念頭に置いていたことを物語っています。

しかしながら、これら高度な設計目標と8年間にわたる開発期間にもかかわらず、11B97核電気ロケットエンジンが実際に宇宙空間を飛行することはありませんでした。地上での開発作業は行われたものの、実機が打ち上げられ、その設計通りの性能が宇宙で実証される機会は訪れませんでした。

核動力を用いた宇宙推進システムは、11B97以外にも様々な形で研究開発が行われてきました。関連するプロジェクトとしては、アメリカ合衆国で進められた核熱ロケット計画であるNERVA（Nuclear Engine for Rocket Vehicle Application）や、ソ連における別の核推進エンジン開発であるRD-0410などが挙げられます。これらのプロジェクトは、核エネルギーを宇宙推進に利用しようとする国際的な関心の高まりと、各国における並行した技術開発の取り組みを示しています。

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