12ページの詩集

太田裕美が1976年11月25日に発表した通算5作目となるオリジナル・アルバムが、『12ページの詩集』です。この作品は、前作までのポップ路線に加え、フォークやニューミュージックの色合いを強く帯びている点が大きな特徴となっています。

本作の制作には、当時の日本の音楽シーン、特にフォークおよびニューミュージック分野を牽引する多くの著名なソングライターや作曲家が参加しました。その豪華な顔ぶれは、当時のLPレコードの帯にも明記されており、そこにはアルバム制作に携わったアーティストとして、阿木燿子、荒井由実、伊勢正三、佐藤健、イルカ、宇崎竜童、喜多條忠、ケン・田村、田山雅充、谷村新司、筒美京平、萩田光雄、松本隆、山田つぐとといった、錚々たる名前が連ねられています。彼らが提供した楽曲は、それぞれの個性を放ちながらも、アルバム全体の統一感と深みを形作っています。

収録曲には、すでにシングルとして発表され、好評を博していた「最後の一葉」が収められています。この曲は松本隆が作詞、筒美京平が作曲を手がけた、太田裕美の代表曲の一つです。アルバムは全12曲で構成されており、A面に6曲、B面に6曲が収録されています。

A面には、阿木燿子・宇崎竜童コンビによる「あさき夢みし」、荒井由実が作詞・作曲した「青い傘」、そして松本隆作詞、筒美京平作曲の「最後の一葉」などが並びます。特に注目されるのは5曲目の「君と歩いた青春」で、これはフォークグループ『風』が1976年に発表した楽曲のカバーです。この曲はアルバム発表から5年後の1981年に、太田自身によるセルフカバー・シングルとしても改めてリリースされ、再び話題となりました。

B面には、松本隆が作詞を手がけた「湘南アフタヌーン」「一つの朝」「ガラスの腕時計」などが収録されています。また、イルカが作詞・作曲した「ミモザの下で」や、谷村新司が作詞・作曲した「赤い花緒」など、提供アーティスト自身の個性が光る楽曲も収録されています。アルバム最後の曲「恋の予感」は、太田裕美自身が作詞・作曲を手がけています。

アルバム全体の編曲は、特記のある一部楽曲（「カーテン」の編曲：筒美京平）を除き、萩田光雄氏が担当しています。彼の繊細かつダイナミックなアレンジワークが、バラエティ豊かな楽曲群を見事にまとめ上げ、アルバムの世界観を構築しています。

商業的にも成功を収め、日本の主要音楽チャートであるオリコンでは最高9位にランクインしました。このヒットは、太田裕美が単なるアイドル的な存在ではなく、幅広い音楽性を持つアーティストとして認知されるきっかけの一つとなったと言えるでしょう。時代を経て、1991年にはCDとして復刻され、再び多くの音楽ファンに届けられました。

『12ページの詩集』は、太田裕美のキャリアにおける重要な位置を占める作品であり、当時の日本のフォーク・ニューミュージックシーンの活気と、太田裕美というアーティストの表現力の豊かさを今に伝える一枚です。

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