18世紀オーケストラ

18世紀オーケストラ（Orkest van de Achttiende Eeuw）

18世紀オーケストラは、オランダのアムステルダムを拠点に活動する、世界的に著名な古楽オーケストラです。1981年、リコーダー奏者として「リコーダーのパガニーニ」と称される現代屈指の巨匠フランス・ブリュッヘンと、ヴァイオリニストのルーシー・ファン・ダールの発案により設立されました。ブリュッヘンは私財を投じ、楽団の「事実上の」プリンシパルおよび音楽監督として、その中心的な役割を担いました。彼は楽団を率いて日本への演奏旅行を行った翌年、2014年に惜しまれつつこの世を去りました。共同創設者であるシューヴェルト・フェルスターは、1984年以降、オーケストラの運営責任者として楽団を支えています。

組織と運営

このオーケストラは、約60名の優れた古楽奏者たちによって構成されており、その出身国は世界15ヵ国、さらに詳細には22ヵ国にわたる国際色豊かな集団です。すべてのメンバーは、18世紀または19世紀の音楽に深い知識と情熱を持ち、当時の楽器、またはその精巧な複製品を用いて演奏します。団員の選考は、参加を希望する音楽家からのオーディション申し込みや、既存メンバーからの紹介を受けた後に面接を経て行われます。

楽団の管理運営は、メンバー全員が一体となった集合体として行われる点に特色があります。特に、コンサートで得られた収益は、団員全員に平等に分配されるという独自の形態を採用しています。創立当初の財政基盤は、ブリュッヘンの私財や世界中の知己からの援助に加え、ベルンハルト王子財団賞（現在の文化基金賞）やオランダ政府からの補助金に支えられていましたが、その後は複数の大企業からの後援も得ています。

活動と演奏スタイル

オーケストラの活動は非常に精力的に行われています。当初は年に2回のコンサート活動でしたが、現在では年5回へと増加しています。世界各国への演奏旅行を積極的に行っており、オランダの本拠地に戻った際には、帰国コンサートをもってその年の活動を締めくくるのが恒例となっています。

フランス・ブリュッヘンは、18世紀オーケストラの芸術性を常に新鮮に保つことを目指しました。楽団を「代表者個人のオーケストラ」という狭い枠に閉じ込めないため、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団のようなモダン楽器の団体との共演や、ロジャー・ノリントンといった著名な客演指揮者の招聘も積極的に行いました。また、弦楽パートのみによる室内楽作品にも取り組み、レパートリーの幅を広げました。

彼らの演奏における最大の特徴は、古楽器による合奏ならではの特色を徹底的に追求している点にあります。現代のオーケストラが目指す均整の取れた、いわゆる「均等の美学」とは一線を画し、それを敢えて否定することで、かつての古楽器演奏にはなかったような、シンフォニックで力強い、迫力のある響きを生み出しています。ブリュッヘン自身が「私たちは〈傑作〉しか演奏しない」と語っていたように、そのレパートリーは厳選された名曲ばかりであり、彼らの演奏はまさに「傑作揃い」と評価されています。

録音活動

18世紀オーケストラの録音活動は1985年に始まりました。ハイドンやモーツァルトの中後期交響曲集、ベートーヴェンやシューベルトの交響曲全集など、古楽器演奏による歴史的名盤を数多く残しています。録音は主にオランダのフィリップス・クラシックス・レーベルで行われたほか、スペインの前衛的なレーベルであるグロッサ（Glossa）でも交響曲などが録音されています。

名称についても特徴があり、公式サイトでは「バロック音楽のアンサンブル」と説明されており、公式名称があらかじめ様々な言語に翻訳され提供されています。

日本人奏者もメンバーとして参加しており、例えば第1オーボエの本間正史氏（1981年加入）や、ヴァイオリンの山縣さゆり氏（1985年加入）、若松夏美氏などが名を連ねています。また、これまでにユリアンナ・アヴデーエワ、海老彰子、川口成彦、小林愛実、ダン・タイ・ソン、トマシュ・リッテルといった著名なピアニストらが客演しており、特に日本の福岡でのコンサートでは多くの客演ピアニストを迎えています。

18世紀オーケストラは、創設者ブリュッヘンの揺るぎない芸術的ビジョンのもと、古楽器の可能性を最大限に引き出し、既成概念にとらわれない独自のサウンドを追求することで、世界の古楽界において確固たる地位を確立しています。その遺した録音や現在進行形の活動は、多くの聴衆に感動を与え続けています。

もう一度検索