1851年12月2日のクーデター

1851年12月2日、フランス共和国大統領ルイ・ナポレオン・ボナパルトは、憲法を無視したクーデターを実行しました。彼は、再選が禁じられていたにもかかわらず、権力の座にとどまるため、大胆な行動に出たのです。

その朝、ボナパルトは6つの政令を発布しました。国民議会の解散、男性普通選挙の復活、国民投票による新憲法の制定などが含まれており、第二共和国体制を事実上終わらせる内容でした。1848年2月に成立した第二共和国は、わずか4年足らずで終焉を迎えることとなります。

このクーデターに対し、パリ市民の反応は鈍いものでした。保守的な議会を支持する動きも見られましたが、地方部、特に30州ほどの農村地域では状況が異なっていました。共和主義者たちは武装蜂起し、首都パリに向けて行進する地域もありました。

共和主義者の抵抗は、ヴィクトル・シュールヒャー、ヴィクトル・ユーゴー、ジャン＝バティスト・ボーダンといった著名な人物が主導しました。しかし、彼らの抵抗運動は、政府軍によって短期間で鎮圧されました。ラコルデール神父やブログリ王子といった人物も政府軍に加わり、共和主義者の抵抗を粉砕していったのです。

パリでは数百人の犠牲者が出ました。軍隊による反乱軍への衝突や、略式処刑なども行われましたが、正確な犠牲者数は不明なままです。地方でも同様の事態が発生し、例えばヴァール県では武装が不十分だった共和主義者たちが政府軍に制圧され、60～90人もの死者が出ました。

フランス全土で2万7千人以上が逮捕・起訴されました。政府は、この抵抗運動を「ジャクリー」と呼び、徹底的な弾圧を行いました。この強硬な弾圧は、社会不安を煽るプロパガンダとして利用され、ボナパルト政権への支持を強める効果を生み出しました。政府のプロパガンダは、人々の噂話や非武装市民の虐殺、組織的なレイプなどの逸話を誇張して広め、恐怖政治を展開しました。

憲法上の合法性にこだわる共和主義者に対し、ボナパルト派は「普遍的な参政権」と「国民の直接的な信頼」こそが真の合法性であると主張しました。彼らは、憲法よりも国民の支持を優先させることで、クーデターを正当化しようとしたのです。

ボナパルトは国民投票を実施し、自身の行動と改革を承認させようとしました。国民投票の結果、彼の行動は承認され、男性普通選挙が復活しました。そして、それから約一年後の1852年12月2日、再び国民投票が行われ、第二帝政が成立。ルイ・ナポレオン・ボナパルトは「ナポレオン3世」として皇帝に即位しました。このクーデターと帝政への移行は、フランスの歴史において重要な転換点として位置づけられています。彼の強権的な政治手法、国民投票による正当化、そして帝政へのスムーズな移行は、現代にも影響を与え続ける重要な出来事と言えるでしょう。

このクーデターは、ルイ・ボナパルトのブリュメール18日と同様に、権力掌握のための強硬手段を示す重要な歴史的事件であり、カール・マルクスもその過程を分析しています。フランス革命や市民革命といった歴史的背景も、このクーデターを理解する上で欠かせない要素となります。

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