1924年12月ドイツ国会選挙

1924年ドイツ国会選挙：政権運営の行き詰まりと新たな連立政権の誕生

1924年12月7日に行われたドイツ国会選挙は、ワイマル共和政下の政治的混乱を反映した重要な選挙でした。ヴィルヘルム・マルクス内閣（中央党、人民党、民主党、バイエルン人民党による連立政権）は、右派（国家人民党）と左派（社民党）双方との連携に苦しみ、政権運営に行き詰まっていました。そのため、国会勢力図の変化に期待し、解散総選挙に踏み切りました。しかし、選挙結果は大きな変化をもたらすことなく、政治的膠着状態は継続することとなります。

国会解散までの経緯：不安定な連立政権とドーズ案

1924年5月に行われた前回の選挙では、強硬保守の国家人民党が躍進、さらに極右・極左勢力の台頭も相まって、マルクス内閣は早くも不安定な状態に陥っていました。国家人民党はマルクス内閣の退陣を要求し、自ら政権を担う意思を示しました。マルクス内閣は総辞職しましたが、その後発足した第二次マルクス内閣もまた、困難に直面することになります。

最大の課題は、ドーズ案関連法案の採決でした。この法案は憲法改正に相当する部分を含んでおり、三分の二以上の賛成が必要でした。国家人民党の協力が不可欠でしたが、同党は選挙戦でドーズ案を激しく批判していたため、容易に賛成を得られるとは限りませんでした。大統領は法案否決の場合、国会を解散すると宣言。この圧力と、党内意見の分裂から、国家人民党は最終的に法案に賛成しました。

しかし、この過程で政府与党内は分裂。国家人民党入閣を巡り、人民党と民主党の意見が対立し、長期間にわたる政府改造議論が展開されました。社民党との連立交渉も試みられましたが、合意には至らず、最終的にマルクス首相は国会解散を決断。大統領の承認を得て、12月7日に総選挙が実施されることとなりました。

選挙結果とその後：膠着状態の継続

選挙の結果、社民党はやや議席数を回復させましたが、中道3党（中央党、人民党、民主党）だけでは依然として政権を樹立できない状況が続きました。一方、極右・極左勢力の議席は減少しました。これは、政府反対勢力の勢力低下を意味し、組閣をやや容易にする結果となりました。

しかし、政権の枠組みは依然として不明確でした。マルクス内閣は連立交渉に失敗し、総辞職。組閣を任されたハンス・ルターは、国家人民党との連立を選択。1925年1月、国家人民党、人民党、中央党、バイエルン人民党によるルター内閣が発足しました。この選挙は、ワイマル共和政の政治的不安定さを示すものとなり、その後も続く政権交代の序章となりました。

選挙データ

選挙制度: 比例代表制
選挙権: 20歳以上の男女
投票率: 78.76% (前回選挙より1.34%増加)

参考文献

阿部良男『ヒトラー全記録 ：20645日の軌跡』柏書房、2001年
* エーリッヒ・アイク 著、救仁郷繁 訳『ワイマル共和国史 II 1922~1926』ぺりかん社、1984年

この選挙は、ドーズ案や極端なイデオロギー勢力の台頭を背景とした、ワイマル共和政の不安定な政治情勢を象徴する出来事でした。また、今後のドイツ政治において重要な転換点となる出来事でもありました。

もう一度検索