1931年のラジオ (日本)

1931年（昭和6年）の日本のラジオ

1931年、昭和初期の日本のラジオ界は、放送網の着実な拡大と番組内容の拡充という、二つの大きな潮流の中で発展を続けました。この年は、日本放送協会による地方都市での放送開始が相次ぎ、より多くの人々がラジオ放送にアクセスできるようになる重要な一歩が記されました。また、東京においては第二放送が開始され、番組編成の多様化が進展しました。

地方における放送開始の動きは、年明け早々から活発でした。まず2月1日には岡山、続く3月8日には長野、そして3月21日には静岡で、それぞれ日本放送協会によるラジオ放送がスタートしました。秋から冬にかけてもこの流れは続き、11月11日に新潟、12月21日には小倉（現在の北九州市）での放送が開始されました。これらの地方における放送開始は、それまで都市部に限定されがちだったラジオのサービスエリアを広げ、全国的な情報網、文化網としてのラジオの基盤を築く上で極めて重要な意味を持っていました。

一方、首都である東京では、放送内容のさらなる充実が図られました。特に注目されるのは、4月6日に東京中央放送局で第二放送が開始されたことです。これは、第一放送とは異なる編成によって、リスナーに多様な選択肢を提供するものであり、放送時間の増加と番組ジャンルの細分化を促進する契機となりました。二つのチャンネルを持つことで、教育、文化、娯楽など、より専門的あるいは特定の層に向けた番組の企画・放送が可能となったのです。

番組面でも、この年はいくつかの新しい試みが見られました。スポーツ中継としては、7月3日に東京中央放送局が札幌競馬場のレースを初めて中継しました。これは、臨場感のある音声でスポーツイベントをリスナーに届けるという、ラジオの特性を活かした新しいジャンルの開拓でした。教育・教養分野では、東京中央放送局の第二放送で9月10日に「支那語初等科」が開始され、語学学習の機会が提供されました。また、時事問題への関心の高まりを反映して、10月4日には大阪中央放送局で「時事解説」が、10月17日には東京中央放送局で「時事講座」が始まり、聴取者に国内外の出来事や背景について解説する番組が登場しました。さらに、国際情勢に関するものとしては、12月15日に東京中央放送局で「満蒙事情特別講座」が開始されるなど、時代の情勢を反映した社会教育的な番組も企画・放送されました。

1931年は、新たな放送局の開設によるサービスエリアの拡大、第二放送の開始による番組多様化の推進、そしてスポーツ中継や語学、時事解説といった新しいジャンルの番組登場など、日本のラジオ放送がネットワークとしても内容としても、着実にその歩を進めた一年であったと言えるでしょう。これらの動きは、その後の日本の情報伝達、文化普及、社会教育において、ラジオが果たす役割を確立していく上で重要な礎となりました。

もう一度検索