1933年11月ドイツ国会選挙

1933年11月12日、ドイツにおいて国会選挙が実施されました。この選挙は、ナチス党（国民社会主義ドイツ労働者党）の圧倒的な優位を決定づける、歴史的な出来事となりました。

既にナチス党以外の政党は全て解散させられていたため、実質的にナチス党の単独候補による選挙となりました。選挙には、非ナチス党員の推薦者22名を含め、ナチス党員のみが出馬しました。このことは、ドイツにおけるナチス政権の独裁体制が、選挙という形式を通して更に強固になったことを意味しています。

選挙と同日には、国際連盟からの脱退を問う国民投票も実施されました。その結果は、賛成票が95.1%という圧倒的な数字で、ドイツの国際社会からの孤立を鮮明にしました。この国民投票も、ナチス政権による厳格な統制の下で行われたと推測されます。

ナチス党は、組織的な選挙運動を展開しました。徹底した投票行動の監視は、投票率を著しく高める要因となりました。ナチス党の報告書によると、ある小管区では投票率が100%に達しており、投票内容についても厳格な監視が行われていました。反対票を投じた者の特定も可能であったとされ、この事実は、国民の意思表示が事実上制限されていたことを示しています。

この小管区においては、76市町村のうち56市町村でナチス党支持率が100%という結果が報告されています。こうした結果の裏には、ナチス党による徹底した統制と、国民に対する強い圧力があったと推察できます。国民は、自由な意思に基づいた投票行動を、事実上制限されていたと言えるでしょう。

この選挙で初当選を果たした議員の中には、後にナチス政権の中枢で重要な役割を担う人物が多数含まれています。

例えば、フリッツ・ティッセンは、ドイツ最大の鉄鋼トラストである合同製鋼の会長であり、ナチス党にとって重要なパトロンでした。彼の当選は、ナチス党と財界の癒着の深さを象徴する出来事と言えます。

ヴォルフ＝ハインリヒ・フォン・ヘルドルフは、ナチス党ベルリン突撃隊の指導者、ポツダム警察長官、そして後にベルリン警察長官を務めるなど、治安維持に大きく関わりました。彼の当選は、ナチス党による権力掌握と治安維持体制の確立を促進したと考えられます。

マルティン・ボルマンは、総統代理幕僚長、ナチス党官房長、そして総統秘書と、ヒトラーの側近として重要な役割を果たしました。彼の当選は、ナチス党内の権力構造と、ヒトラーへの絶対的な忠誠を示すものです。

1933年11月12日のドイツ国会選挙は、ナチス党による独裁体制の確立を決定づけた選挙であり、その後のドイツ、ひいては世界の歴史に大きな影響を与えました。この選挙を通して、ナチス政権による徹底した統制と、国民の自由な意思表示の制限が明らかになります。選挙結果だけでなく、その背景にある政治状況や社会情勢を理解することで、歴史的出来事の真の姿が見えてきます。この選挙は、民主主義の危機と独裁体制の確立という、歴史の大きな転換点を示す重要な出来事と言えるでしょう。

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