1942年の全国中等学校野球大会

1942年 全国中等学校野球大会の背景と経緯

1942年に実施された全国中等学校野球大会は、夏に行われた特異な大会で、文部省と大日本学徒体育振興会の主催によるものでした。この大会は、通常の全国中等学校優勝野球大会とは異なり、その名は全国中等学校錬成野球大会とされました。しかし、甲子園球場で開催されたにもかかわらず公式の記録には残らず、幻の甲子園と称されています。

開催の経緯

大会の開催背景には、1941年に発表された全国規模のスポーツ大会の中止があります。これは第二次世界大戦の影響によるもので、当初予定されていた第27回全国中等学校優勝野球大会も中止となりました。1942年、「戦意高揚」を目的に文部省と大日本学徒体育振興会は特別にこの大会を行うことを決定。甲子園球場をその舞台に選び、開催が決まりました。

試験的な部分が多かったため、朝日新聞社からの大会の回数継承や優勝旗の使用の提案は却下され、記録に残ることはありませんでした。その後、開催権は文部省に譲渡され、選手たちは新たな挑戦へ臨むことになりました。

地方大会と全国大会

地方大会は、各地で開催された16の独自の大会から成り立ちました。例として、甲信静大会や南関東大会などが挙げられますが、朝鮮や満洲では実施されていませんでした。

この大会では、参加者に「満19歳未満」という年齢制限が設けられ、そのために出場することができない選手も存在しました。1942年8月23日から28日にかけて全国大会が行われ、優勝校は徳島商業高等学校が獲得しました。

準優勝の平安中学校は、準決勝で中止となった試合が影響し、翌日に準決勝と決勝を連続で行うという珍しい展開がありました。優勝した徳島商には賞状が送られましたが、その後の空襲によってその記録も消失してしまいます。

大会の特徴と軍事色

この大会は文部省の他に日本軍が主導していたため、軍事的な色彩が色濃く現れていました。スコアボードには「勝って兜の緒を締めよ 戦い抜こう大東亜戦」というスローガンが掲げられ、ユニフォームに使用される文字は漢字のみとされ、ローマ字は禁じられました。また試合中の進行ではサイレンの代わりに進軍ラッパが使用され、校歌も自粛されました。さらに野球が敵性球技と見なされていたことから、特別なルールが設けられました。

大会後の影響

優勝した徳島商の主将、須本憲一は後に監督として1958年に全国高等学校野球選手権大会で成果を上げました。また準優勝の富樫淳も母校の監督として名を馳せ、1956年には優勝を果たします。徳島商自身は1947年に行われた選抜中等学校野球大会において正式な甲子園制覇を達成し、1977年には当時の文部大臣の名義で賞状が贈られました。

2010年にはNHKがこの大会を題材にしたドキュメンタリーを放送し、再現ドラマでその歴史が語られました。このように、1942年の全国中等学校野球大会は、その特異な条件下で行われたものとして現在も記憶され続けています。

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