1955年のラジオ (日本)

1955年の日本のラジオ界

1955年は、日本のラジオ放送において、技術的な進歩、報道体制の強化、そして多様な番組コンテンツの提供が進んだ画期的な年として記憶されています。

技術革新と新たな試み

この年、日本のラジオ界では新しい放送技術の導入が進みました。特筆すべきは、立体（ステレオ）放送と高音質放送の始まりです。

まず、NHKは4月16日に、ラジオ第1と第2の2つの周波数を使い、モノラル音声を左右に分けて送る方式で立体放送を開始しました。この記念すべき初のステレオ番組は、録音ルポルタージュ形式のドキュメンタリー『夜の東京をゆく』でした。その後も、芸術祭参加作品などで立体放送が試みられ、新たな音響体験が追求されました。

一方、民放でも高音質化への取り組みが見られました。ラジオ東京（現在のTBSラジオ）は4月7日、『イングリッシュ・アワー』の中で、民放としては初めて高音質の「ハイファイ放送」を開始しました。これは、NHKが先行して実施していた広帯域放送に相当するもので、より豊かな音で番組を届ける試みでした。

災害報道における役割

1955年のラジオは、災害発生時の緊急報道においてもその力を発揮しました。10月1日に発生した新潟大火では、ラジオ新潟（現在の新潟放送）が迅速な報道を行いました。

火災が拡大し、局舎が危険な状況となる中でも、同局は本社屋上から現地の状況を伝え続けましたが、炎が迫ったため放送を一時中断し退避。しかし、わずか約1分の空白の後、送信所に急遽設営した仮設スタジオから放送を再開しました。本社建物は全焼したものの、この緊迫した状況下での粘り強い報道活動は高く評価され、第4回民放祭で報道活動賞を受賞しました。これは、災害時におけるラジオの即時性と報道の重要性を改めて示す出来事でした。

多様な番組の展開

1955年には、後のラジオ番組の礎となるものや、多様なジャンルの新しい番組が数多く誕生しました。

ニッポン放送では10月7日、クラシック音楽番組『フジセイテツコンサート』の放送を開始。この番組は、提供社の合併に伴い『新日鉄コンサート』と改題されながらも、2005年に終了するまで約半世紀にわたり2500回以上放送された、日本のラジオ史に残る超長寿番組となりました。

他にも、NHKでは連続番組『新諸国物語「オテナの塔」』（1月）、『新・家庭読本』『科学の散歩』（4月）、人気番組『お笑い三人組』（11月）などが始まりました。ラジオ東京では『伸び行く子供たち』（3月）、『リクエスト・ミュージック』（7月）、新日本放送（現在のMBSラジオ）ではラジオ版『素人名人会』（10月）、朝日放送では『夫婦善哉』（6月）がスタートするなど、各局が特色ある番組を企画しました。

また、年末には恒例の特別番組が放送され、ラジオ東京ではテレビと同時放送の『オールスター歌合戦』、民放各局では『ゆく年くる年』、NHKでは立体放送による『除夜の鐘』などが、新年を迎える聴取者を楽しませました。

局の開局

この年には、新たな放送局も誕生しました。3月10日には岐阜放送（現在の岐阜放送とは異なる法人で、後に東海ラジオ放送となる）が開局し、日本のラジオネットワークが拡大していきました。

1955年は、技術的な挑戦、社会的な役割の遂行、そして番組コンテンツの充実という多方面で、日本のラジオがその存在感を一層高めた年であったと言えるでしょう。

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