1960年ベルギーグランプリ

1960年ベルギーグランプリ：悲劇と勝利の狭間

1960年6月19日、ベルギー・スパ・フランコルシャンで開催されたF1世界選手権第5戦ベルギーグランプリは、その歴史に暗い影を落とす数々の事故によって、F1界最悪の日の一つとして記憶されています。

悲劇の舞台：スパ・フランコルシャン

このレースは、当初24周で予定されていましたが、実際には36周に延長されました。しかし、その延長されたレースは、予想をはるかに超える悲劇と数々のアクシデントによって彩られることとなります。予選段階から予兆はありました。スターリング・モスは予選中に大クラッシュを喫し、重傷を負って長期欠場を余儀なくされました。マイク・テイラーも予選中の事故で重傷を負い、惜しまれつつもドライバーとしてのキャリアを終えることになります。そして、決勝レースでは、クリス・ブリストウとアラン・ステイシーという2人のドライバーが、レース中の事故で命を落とすという、想像を絶する悲劇に見舞われました。このグランプリでの死亡事故は、シーズン3件目（インディ500とオランダGPに続く）であり、1994年サンマリノグランプリまで、複数の死亡事故が発生したグランプリとしては最悪の事例となりました。

レース展開：勝利と喪失の狭間

ジャック・ブラバムはポールポジションからスタートを切ると、レースをリードし続けました。しかし、レースは多くのアクシデントに見舞われ、多くのドライバーがリタイアを余儀なくされます。特に、クリス・ブリストウの死亡事故は、多くのドライバーに衝撃を与えました。ブリストウはマルメディコーナーでコースアウトし、コース脇のバリケードに激突。その際に首を切断され、即死しました。さらに5周後にはアラン・ステイシーが鳥の衝突によってコースアウトし、炎上するマシンから投げ出されて死亡しました。レース終盤には、グラハム・ヒルがエンジン故障でコース脇に止まりましたが、当時の規定により、フィニッシュラインを越えなければ完走とはみなされず、3位はオリヴィエ・ジャンドビアンとなりました。

結果とその後

ジャック・ブラバムが優勝、ブルース・マクラーレンが2位、オリヴィエ・ジャンドビアンが3位という結果に終わりました。ブラバムはポール・トゥ・ウィン、全周リードというグランドスラムを達成しました。しかし、このレースでの2名のドライバーの死は、F1関係者に大きな衝撃を与え、安全基準の見直しを迫ることになります。このグランプリでの悲劇は、翌シーズンからのエンジン排気量制限（1.5リットル）といった、安全対策強化の大きな転換点となりました。授賞式では、ブリストウとステイシーに1分間の黙祷が捧げられました。

予選とエントリーリスト

予選では、スターリング・モスとマイク・テイラーの事故以外にも、多くのドライバーがクラッシュやトラブルに見舞われました。決勝レースの参加者リストと予選順位、決勝順位などは、当時の記録を参照してください。

まとめ

1960年ベルギーグランプリは、勝利の喜びと悲しみの喪失が複雑に絡み合った、F1の歴史において忘れられないレースとなりました。このレースは、F1の安全性に対する意識を高め、安全対策の強化に大きく貢献した、重要な転換点として位置付けられています。

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