1960年最高裁判所裁判官国民審査

1960年最高裁判所裁判官国民審査

1960年（昭和35年）11月20日、最高裁判所裁判官国民審査が第29回衆議院議員総選挙と同時に実施されました。この国民審査は、8人の裁判官に対する信任を問うものであり、その結果、全員が罷免されないことが確認されました。投票率は72.30%に達し、多くの有権者がこの重要な手続きに参加しました。

審査の背景と概要

この国民審査は、裁判官の適任性が吟味される機会として位置づけられ、罷免を求める有権者の意見を投票を通じて表明することが求められました。特に注目すべきは、この時の審査が再審査となった裁判官が5名含まれていたことです。小谷勝重、島保、河村又介、藤田八郎、齋藤悠輔というこれらの裁判官は、過去の判断に対する国民の信任を再び問われることになりました。結果として、8人全員が国民から信任され、罷免されないことが決定されました。

投票方法と秘密保持

今回は、従来の投票方法に改良が加えられました。国民審査と衆議院選挙の投票用紙は同時に配布され、税関での投票秘密保持が確保されるように設計されました。投票者は、記載所でそれぞれの選択を済ませた後、必ず投票箱に入れるよう求められました。このプロセスにより、より公正な投票環境が整えられました。

印刷方法の変更

国民審査に関する公報はかつて活字印刷が使用されており、誤植のリスクが残っていました。しかし、1960年の国民審査からは写真印刷技術が採用され、誤植の可能性が低減されることとなりました。この変更は、情報の正確性を高め、より信頼性のある情報提供を目指すものでした。

逆風と最高裁の判断

有権者の一人は、国民審査が棄権の自由を奪うものであるとして、無効を求める訴訟を起こしました。しかし、1963年9月5日、最高裁判所はこの訴訟を棄却する判断を下しました。裁判所は、国民審査が有権者の意思を示すものであり、信任票に関しても憲法に反するものではないとし、自由が奪われたとはみなされないと述べました。この判決は、国民審査の位置づけをより強固なものとしました。

参考文献

国民審査に関するさらなる理解を深めるためには、以下の文献を参照することが推奨されます：

• - 西川伸一著『最高裁裁判官国民審査の実証的研究　「もうひとつの参政権」の復権をめざして』（五月書房、2012年）
• - 野村二郎著『最高裁全裁判官　人と判決』（三省堂、1986年）

関連項目

• - 最高裁判所裁判官国民審査
• - 第29回衆議院議員総選挙

1945年以降、日本における国民審査は、民主主義の根幹を成す重要な制度として機能してきました。国民が裁判官に対する信任を投票を通じて行うこのプロセスは、今後も継承され、さらなる発展を遂げていくことが求められています。

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