1960年自由民主党総裁選挙

1960年自由民主党総裁選挙

1960年7月14日、自由民主党の総裁選挙が行われた。この選挙は、岸信介総裁が安保騒動の責任を取って辞任を表明したことに由来し、次期総裁を選出する重要なイベントであった。選挙前、岸は候補者を一本化することを希望していたが、大野伴睦、池田勇人、石井光次郎、藤山愛一郎、松村謙三の五人が立候補を表明。これにより、党内部での派閥対立が激化した。

当初、協議による一本化の可能性があったが、池田は話し合いを拒否し、公選を主張。これは彼に対するメディアの批判を招き、「強情なヤツ」とされることとなった。7月5日には池田が正式に立候補を表明し、その後大野が続き、藤山も立候補した。この頃、岸と池田の支持を受けた派閥が固まっていく中で、他の候補者たちは連合を模索した。

特に池田は、自衛隊の治安出動を強く主張した背景により、彼の政権が岸路線を継承するとの見解が強まった。また、党内の長老である正力松太郎は、池田が当選しても状況を収拾できるか危惧する声を上げていた。その一方で、池田の近い側近である宮澤喜一は、党内の和を保つためには穏やかな人を選ぶべきだとの意見を示した。

さらに、当初の候補者に含まれていた佐藤栄作も岸の助言を受けて立候補を辞退。その結果、佐藤派も池田支持に回ることになった。党内での派閥対立が鮮明化する中、選挙戦はさながら混乱の様相を呈していった。特に、大野派と石井派による2、3位連合が成立したことで、池田には逆風が吹き始めた。

選挙前日の7月12日、大野は立候補を辞退。彼の決断は、石井派の支持が薄らいでいるとの見通しに基づいていた。こうして、池田、石井、藤山の3名による総裁選が行われることとなったが、党内の支持状況が急変していた。結果として、この選挙は党内部の派閥の思惑や策略が色濃く反映されたものとなった。

当日は、日比谷公会堂に場所を移して行われた選挙において、池田が圧倒的な勝利を収める。彼の選出は、自民党における保守本流の一翼を担うことを意味し、情勢を立て直すきっかけとなったが、同日、岸は暴漢に襲われ重傷を負うという事件が起き、選挙活動自体が不穏な幕切れを迎えた。

池田の陣営は多額の資金を用意したとされ、その金銭的裏付けにより選挙戦を有利に進めた。また、大野は池田との関係を良好に保ち続け、今後の政治活動に影響を及ぼすことになった。こうした派閥抗争や党内の闘争は、政権運営の綱渡りを強いられた自民党に過去の教訓をもたらす要因となった。結果的に池田の当選は、保守勢力内の結集を進める契機となり、次の時代を象徴する出来事と評価されている。

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