1961年イギリスグランプリ

1961年イギリスグランプリ：悪天候とフェラーリの支配、そして革新と悲劇

1961年7月15日、イギリスのエイントリー・サーキット。F1世界選手権第5戦、1961年イギリスグランプリは、激しい雨に見舞われた一日となりました。このレースは、フェラーリの圧倒的な強さ、そして新たな技術の挑戦、そして伝説的ドライバーの悲劇が交錯する、ドラマチックな展開を見せました。

フェラーリの圧倒的勝利

予選から決勝まで降り続いた雨の中、フェラーリチームは他の追随を許さない速さを見せつけました。レースを制したのはヴォルフガング・フォン・トリップス。4番グリッドからスタートした彼は、7周目にトップに立つと、その後は後続を寄せ付けず、終始安定した走りで優勝を掴みました。この勝利は、2戦後のイタリアGPで悲劇的な事故で亡くなる彼の、最後のF1優勝となりました。2位にはポールポジションからスタートしたフィル・ヒル、3位にはリッチー・ギンサーと、フェラーリ勢が表彰台を独占する結果となりました。この結果により、フェラーリは残る3戦を残して、コンストラクターズチャンピオンシップをほぼ確定させました。

四輪駆動車の挑戦と悲劇：ファーガソンP99

このレースでは、F1史上初の四輪駆動車、そして最後のフロントエンジン車であるファーガソンP99が参戦しました。ロブ・ウォーカー・レーシングチームからエントリーしたこの革新的なマシンは、ジャック・フェアーマンがドライブした後、スターリング・モスに交代。しかし、ピットでの押し掛けが原因で黒旗が出され、失格という結果に終わりました。F1世界選手権ではこのレースが唯一の参戦となり、その潜在能力を十分に発揮することはできませんでした。しかし、非選手権レースであるゴールドカップでは、雨のコンディションを活かし、モスのドライブで優勝を収めています。このマシンの登場は、F1の歴史に新たな技術的挑戦があったことを示す、重要な出来事でした。しかし、四輪駆動システムは、この時点では他のチームの関心を引くには至りませんでした。

モスの最後の母国グランプリと悲劇

このレースは、スターリング・モスにとって最後の母国グランプリとなりました。翌1962年の開幕前に行われた非選手権レースであるグローヴァー・トロフィーで、彼は大クラッシュに遭い、瀕死の重傷を負いました。この事故により、彼の輝かしいF1キャリアは幕を閉じました。ファーガソンP99での失格という結果、そして翌年の悲劇的な事故は、彼のキャリアに暗い影を落とすこととなりました。

まとめ

1961年イギリスグランプリは、フェラーリの圧倒的勝利、四輪駆動車の挑戦、そしてスターリング・モスのキャリアにおける転換期という、幾つもの要素が絡み合った、記憶に残るレースでした。悪天候の中で繰り広げられた激しい戦いは、F1の歴史に新たな1ページを刻み込みました。

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