1963年ドイツグランプリ

1963年8月4日、ドイツのニュルブルクリンクにおいて、F1世界選手権第6戦、1963年ドイツグランプリが開催されました。15周のレースは、ドラマチックな展開と痛ましい事故によって記憶されることとなります。

予選では、ジム・クラークがロータスでポールポジションを獲得。しかし、レースは序盤からアクシデントの連続でした。ロレンツォ・バンディーニのスピンによる接触事故、そしてウィリー・メレスのクラッシュは、観客1名の死亡という悲惨な結果をもたらしました。メレスは、この事故により両腕両足を負傷し、F1キャリアを終えることとなりました。さらに、クリス・エイモンもステアリング破損による事故でリタイアを余儀なくされています。グラハム・ヒルもギアボックスのトラブルでレースを完走できませんでした。

レース序盤は、クラークとヒルがギアボックスの問題を抱えていました。一方、サーティースは、クラークのエンジン不調と、チームメイトであるヒルのリタイアという幸運にも恵まれ、着実にポジションを上げ、1分以上の差をつけて優勝を飾りました。この勝利は、フェラーリにとって2年ぶりの優勝となりました。クラークは、このレースで2位となり、F1世界選手権において唯一2位に終わったレースとなりました。

3位には、序盤はギアボックスのトラブルを抱えていたリッチー・ギンサーが表彰台を獲得。地元ドイツ出身のゲルハルト・ミッターは、4位入賞と好成績を残しました。また、このレースでは、ダンロップタイヤが全車に採用されました。ATSは輸送事故、別のドライバーはマシンの準備不足により、レースに参加することができませんでした。

このレースは、多くのアクシデントと、サーティースの圧倒的な勝利、そしてクラークの2位という結果、そして、多くのドライバーの奮闘と悲劇が詰まった、記憶に残る一戦となりました。多くのドライバーがマシントラブルやアクシデントに見舞われ、リタイアを余儀なくされた一方、サーティースは、それらのアクシデントを巧みに避け、終始安定した走りで、見事な勝利を収めました。その走りは、まさにチャンピオンの貫禄を示すものでした。

このドイツグランプリの結果、ポイントランキングにおいても大きな変動が起こりました。上位5名のみを示すと、サーティースが首位に立ち、クラーク、ギンサー、ヒル、そして他のドライバーがその後に続きました。このレースは、ドライバーだけでなく、チームにとっても大きな影響を与えたことは間違いありません。

レース後の分析では、安全対策の必要性、マシンの信頼性向上などが改めて議論されました。このレースでの痛ましい事故は、F1における安全基準の向上に大きく貢献したと言えるでしょう。1963年ドイツグランプリは、勝利と悲劇、そしてF1の歴史における重要な転換点として、長く記憶されるレースとなりました。

もう一度検索