1968年カム・ドゥックC-130撃墜事件

1968年カム・ドゥックC-130撃墜事件

1968年5月12日、ベトナム戦争中に発生したカム・ドゥックC-130撃墜事件は、多くの犠牲者を出した悲惨な航空事故として歴史に刻まれています。この事件では、アメリカ空軍のロッキードC-130B輸送機が、離陸直後に撃墜され、乗員乗客155人全員が命を落としました。当時、この事故は死者数において世界最多の航空事故であり、その悲劇は人々に深い衝撃を与えました。

事故の概要

事故が発生したのは、ベトナム中部のカム・ドゥック飛行場です。この日、アメリカ軍は北ベトナム軍とゲリラの攻撃に晒されていました。前日の戦闘で、飛行場は一時的に敵の攻撃に阻まれ、翌12日の朝には、ゲリラがアメリカ軍のCH-47ヘリコプターを撃墜し、その残骸が滑走路を塞ぐという状況に陥りました。その後、残骸は撤去されたものの、ゲリラは飛行場周辺の高台を占拠し、離着陸する航空機を狙える状態でした。このような状況下で、避難民を輸送するため、C-130輸送機が飛行場に着陸することになりました。

事故の詳細な経緯

午前中には、合計145人の避難民が他の機体によって脱出に成功しましたが、その後、カム・ドゥック飛行場へ進入しようとした3機のC-130は、着陸を断念しました。しかし、午後になりC-130の着陸が再開され、15時25分に1機が着陸に成功しました。この時、敵の攻撃を受けながらも、機体は南側に着陸しました。アメリカ側の発表では、この便に搭乗した避難民の中に、アメリカ軍や南ベトナム軍の兵士はいなかったとされています。

その後、150人の難民と5人の乗員（または149人の難民と6人の乗員という資料もある）を乗せたC-130は満席となり、パイロットは北に向かって離陸することを決断しました。しかし、パイロットはこの時、北ベトナム軍の主力部隊がその地域に集中していることを知らなかったのです。16時頃、C-130はカム・ドゥック飛行場を離陸し、高度を上げ始めましたが、直後に撃墜され、滑走路の端から約1.6キロメートルの地点に墜落しました。この墜落により、乗員乗客全員が死亡するという悲劇に見舞われました。

一方で、撃墜されたC-130を目撃した2機目のC-130は、南西方向に離陸することを決断しました。この機体も攻撃を受けましたが、致命的な損傷は免れ、近くのチュライに無事着陸することができました。この事件は、ベトナム戦争の悲劇を象徴する出来事の一つとして、深く記憶されることとなりました。

事故機について

事故を起こしたロッキードC-130B（機体番号60-0297）は、製造番号3600として製造され、1961年に初飛行しました。この機体は、アリソンT56-A-7エンジンを搭載していました。

結論

カム・ドゥックC-130撃墜事件は、軍事作戦中の不運と、情報不足、そして敵の攻撃が重なった結果、多数の犠牲者を出した悲惨な事故でした。この事件は、航空機の安全運行がいかに重要であるかを改めて示唆する出来事となりました。

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