1981年モナコグランプリ

1981年のモナコグランプリは、F1世界選手権の第6戦として、5月31日、モンテカルロ市街地コースで開催されました。このレースは、コースの狭さゆえに予選から決勝まで、多くのドラマを生み出したことで知られています。

まず、予選はコースの狭さから、参加台数が26台に制限されました。さらに、実績の少ない9台のマシンは予備予選を勝ち抜く必要がありました。予備予選では、タンベイ、スレール、ギンザーニ、ガビアーニの4台が予選への進出を果たしました。

本予選では、26台のマシンがしのぎを削り、ネルソン・ピケがポールポジションを獲得しました。当時、ターボ車はターボラグが大きかったため、加速と減速を繰り返す市街地コースでは不利とされていました。しかし、ジル・ビルヌーブはピケに僅差で予選2位という素晴らしい結果を残し、ルーキーのナイジェル・マンセルも3位と好成績を収めました。一方、予備予選を勝ち上がったオゼッラの2台は、予選を通過することができませんでした。決勝レースは20台が参加する形式で行われました。

決勝レース開始前には、ローズヘアピンの上にあるホテルで火災が発生するというアクシデントがありました。消火活動で使用された水がトンネルに流れ込んだため、レースの実施が危ぶまれましたが、トンネル内での追い越しを禁止するなどの措置が取られ、レースは遅延の後、スタートしました。

レースは、ポールポジションのピケがトップを快走する展開となりました。ビルヌーブがピケを追いかける中、13周目には3位を走っていたマンセルがローズヘアピンの立ち上がりでミスを犯し、ロイテマンと接触。ロイテマンはノーズを損傷し、ピットインを余儀なくされ大きく順位を落としました。このアクシデントにより、ロイテマンの15レース連続入賞記録もストップしました。マンセルもリアサスペンションを損傷しリタイアとなりました。

その後、24周目にジョーンズがビルヌーブをオーバーテイクし2位に浮上。38周目にはピケに迫り、10周以上にわたって激しいバトルを展開しました。しかし、52周目にピケが周回遅れをかわす際にミスをしてガードレールに激突、リタイアを喫しました。この時点でジョーンズがトップに立ち、2位にビルヌーブが30秒遅れの差で続きました。

残り20周あたりからジョーンズのペースが落ち始めると、ビルヌーブが徐々に追い上げ始め、残り5周では1秒差にまで詰め寄りました。そして、残り4周の1コーナー手前で、ビルヌーブは見事なオーバーテイクでジョーンズを抜き、トップに躍り出ました。ビルヌーブはそのままトップを守り切り、今季初勝利となる通算5勝目を飾りました。2位にジョーンズ、3位にラフィーが入り、完走はわずか7台という、サバイバルレースとなりました。

ビルヌーブの活躍は数々のレースで見られたものの、このモナコグランプリでの勝利は、その中でも特に記憶に残るものとなりました。コースの特性、マシンの限界、そしてドライバーたちの技量が複雑に絡み合った、まさにドラマチックなレースだったと言えるでしょう。

もう一度検索