1982年の日本公開映画

1982年（昭和57年）は、日本の映画界にとって国内外のバラエティ豊かな作品が多数公開された活気あふれる一年でした。年間を通じて、SF超大作から心温まる人間ドラマ、人気シリーズの最新作、そしてアニメーションまで、幅広いジャンルの映画がスクリーンを彩りました。この年は、特に洋画の大作が注目を集める一方で、邦画も質の高い多様な作品を発表し、多くの映画ファンを楽しませました。

洋画のラインナップには、後に語り継がれる名作や大ヒット作が数多く含まれています。中でもスティーヴン・スピルバーグ監督の『E.T.』は、公開されるやいなや社会現象と呼べるほどのブームを巻き起こし、日本でも歴代最高の興行収入を記録する歴史的な成功を収めました。また、リドリー・スコット監督によるサイバーパンクSFの金字塔『ブレードランナー』や、ジョン・カーペンター監督の特撮ホラーSF『遊星からの物体X』といった、今日でも根強いファンを持つ作品が公開され、観客に衝撃と感動を与えました。アクション映画では、シルヴェスター・スタローン主演の『ランボー』がシリーズの第一作として登場。人気ボクシングシリーズの第三弾となる『ロッキー3』もヒットしました。

その他にも、豪華キャストによるサスペンス『ポルターガイスト』、陸上選手の絆を描いたアカデミー作品賞受賞作『炎のランナー』、デジタル世界を初めて本格的に描いた『トロン』、青春群像劇『初体験/リッジモント・ハイ|初体験_リッジモント・ハイ』など、多様なジャンルの話題作が上映されました。製作国はアメリカ合衆国が圧倒的に多数を占めましたが、ウォルフガング・ペーターゼン監督の緊迫感あふれる戦争映画『U・ボート』（西ドイツ）、フェデリコ・フェリーニ監督の自伝的ファンタジー『フェリーニの都』（イタリア）、フランソワ・トリュフォー監督の恋愛ドラマ『終電車』（フランス）など、ヨーロッパ各国の質の高い作品も紹介されました。さらに、イスラエルとアメリカ合作の青春コメディ『グローイング・アップ／ラスト・バージン』や、カナダとの合作作品も公開され、国際色豊かな年となりました。

一方、邦画も負けじと多彩な作品を発表しました。山田洋次監督による国民的シリーズ『男はつらいよ』は、『寅次郎あじさいの恋』と『花も嵐も寅次郎』の2作品が公開され、変わらぬ人気を示しました。アニメーション映画は特に豊作で、子供向けの人気シリーズから本格的なSF、芸術作品まで幅広い層に向けた作品が登場しました。例えば、『ドラえもん のび太の大魔境』、『機動戦士ガンダムIII めぐりあい宇宙編』、『伝説巨神イデオン 接触篇/発動篇』といった人気シリーズの劇場版に加え、宮沢賢治原作の美しいアニメーション『セロ弾きのゴーシュ』も公開されました。また、東映まんがまつりでは複数の短編アニメが上映され、多くの子供たちを楽しませました。

実写邦画では、深作欣二監督が松竹蒲田撮影所を舞台に映画人の愛憎を描いた『蒲田行進曲』が高い評価を得て、その年の映画賞を席巻しました。薬師丸ひろ子主演のSFコメディ『セーラー服と機関銃』（前年公開だがこの年も上映）、社会派ドラマ『疑惑』、『誘拐報道』、そして角川映画の話題作『汚れた英雄』なども公開されました。さらに、武田鉄矢主演の『刑事物語』、大林宣彦監督の尾道三部作第一作『転校生』など、後々まで語り継がれる作品が生まれました。

国際共同製作としては、日本とオーストラリアの合作『南十字星』、日本とイタリアの合作『窓からローマが見える』などが公開され、日本の映画製作が国際的な広がりを見せ始めた一端を垣間見ることができました。このように、1982年はハリウッドの大作からヨーロッパの芸術映画、そして意欲的な邦画作品まで、多種多様な映画が日本全国の劇場で公開され、当時の観客に感動や興奮、そして新たな視点を提供した、記憶に残る一年と言えるでしょう。

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