1984年のUWF

1984年のUWF

書籍概要

本書『1984年のUWF』は、気鋭のノンフィクション作家である柳澤健氏によって執筆され、2017年に文藝春秋より世に送り出されました。プロレス史において特異な光を放つプロフェッショナル・レスリング団体、UWF。その黎明期である「1984年」という一年間に焦点を当て、団体の設立から激動の内情を詳細に描いたノンフィクション作品です。

内容詳細

プロレス界に新風を巻き起こすべく、1984年に旗揚げされたUWF。その活動期間は決して長くはありませんでしたが、独自のスタイルと哲学は、その後のプロレス界に計り知れない影響を与えました。本書は、まさにそのUWFが胎動し、様々な理想や思惑が交錯した「1984年」という重要な年を切り取ります。団体内部で繰り広げられた人間模様、組織としての葛藤、そして関わった選手や関係者たちが抱いた夢や苦悩に深く切り込んでいきます。

柳澤氏は、丹念な取材に基づき、表向きの華やかさの裏側にあった生々しい現実を抉り出します。なぜUWFは生まれ、どのようにして短期間のうちにその形を変えていったのか。そこに集った人々は、どのような思いを抱き、どのような選択を迫られたのか。本書は、単なるプロレス団体の歴史を追うのではなく、一つの組織が生まれ、変化していく過程で露わになる人間の本質、そして理想と現実の間の相克を描き出しています。プロレスというエンターテインメントの舞台裏で息づいていた、剥き出しのドラマが克明に記録されています。

刊行背景

本書は、もともと日本の代表的なスポーツ総合誌である『Sports Graphic Number』において連載されていた記事を基にしています。雑誌連載として高い評価を得たこれらの記事に、さらなる加筆や修正が施され、一冊の単行本としてまとめ上げられました。雑誌掲載時にも大きな反響を呼んだ話題作が、より深掘りされた内容として書籍化されたことで、多くの読者にUWFという存在、そしてその舞台裏で繰り広げられた真実に触れる機会を提供しています。

本書の意義

『1984年のUWF』は、単にプロレスファンにとって興味深い読み物であるにとどまりません。一つの組織が立ち上がり、志を共有する人々が集まる中で生まれる軋轢や、時代の波に翻弄されながらも理想を追求しようとする姿は、どのような分野にも通じる普遍的なテーマを含んでいます。プロレス史の重要な一章であるUWFの黎明期を、ノンフィクションの手法で深く掘り下げた本書は、当時のプロレス界を知る上での貴重な資料であると同時に、組織論や人間ドラマとしても読み応えのある作品と言えるでしょう。柳澤氏の筆致は、関係者たちの息遣いまでもが聞こえてくるかのような臨場感をもって、読者を1984年のリングサイド、いや、それよりも遥かに奥深い、団体内部へと誘います。プロレスというジャンルを超え、多くの読者に響く力を持った一冊です。

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