1985年のロードレース世界選手権

1985年FIMロードレース世界選手権：スペンサーの黄金時代

1985年のロードレース世界選手権は、ホンダのフレディ・スペンサーが歴史に名を刻んだシーズンとなりました。彼は500ccクラスと250ccクラスにダブルエントリーし、見事両クラスでチャンピオンを獲得するという偉業を達成したのです。これは、異なるクラスでのダブルタイトル獲得という史上初の快挙でした。

スペンサーの圧倒的な強さ

スペンサーの成功の鍵は、彼のために開発されたマシンと、彼の類まれな才能にありました。1984年型NSR500とは一転、オーソドックスな設計の1985年型NSR500は、スペンサーの要望を反映した事実上の専用マシンでした。250ccクラスのRS250RWも同様に、圧倒的な性能を誇っていました。その結果、500ccクラスでは完走した全レースで2位以上という驚異的な成績を残し、250ccクラスでもシーズン途中で6連勝を達成するなど、ライバルを寄せ付けない強さを見せつけました。現在のMotoGPでは異なるクラスへのダブルエントリーが禁止されているため、スペンサーは事実上最後のダブルタイトルホルダーとしてその名を歴史に刻んでいます。

ライバルたちの戦い

前年度チャンピオンのエディ・ローソンは、開幕戦でスペンサーとの直接対決を制するなど健闘しましたが、スペンサーの圧倒的な速さの前に屈し、3勝を挙げるもランキング2位に終わりました。ヤマハのクリスチャン・サロンは、250ccクラスでのチャンピオン経験を活かし、500ccクラスにステップアップ。第3戦西ドイツGPで初優勝を飾るなど、ランキング3位と好成績を残し、シーズンを盛り上げました。また、オーストラリア人ライダーのワイン・ガードナーは、NSR500やYZR500といったトップマシンに比べ性能が劣るNS500で参戦しながらも、5回の表彰台を獲得。ランキング4位に入り、将来性豊かな活躍を予感させました。

一方、長年125ccクラスでチャンピオンを独占してきたアンヘル・ニエトは、80ccクラスに移籍。これにより空席となった125ccクラスのタイトルは、ニエトのチームメイトであったファウスト・グレシーニが獲得し、チームに4年連続のタイトルをもたらしました。また、80ccクラスでは、スイスのステファン・ドルフリンガーが4連覇を達成しました。ニエト自身はフランスGPの80ccクラスでグランプリ最後の勝利となる通算90勝目を挙げ、これは当時ジャコモ・アゴスチーニに次ぐ歴代2位の記録でした。

さらに、日本の片山敬済選手は、長年のキャリアに幕を閉じました。77年の350ccチャンピオンである片山選手は、フランスGPを最後に引退を表明し、多くのファンに惜しまれながらレーシングシーンから退きました。

1985年シーズンは、スペンサーの圧倒的な活躍が際立ったシーズンでした。彼の偉業は、ロードレース史に永遠に刻まれるでしょう。同時に、他のライダーたちの活躍や、クラスごとの戦いの激しさも、このシーズンを記憶に残るものとしています。

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