1992年の広島東洋カープ

1992年の広島東洋カープ

前年の1991年に5年ぶりとなるリーグ優勝を成し遂げた広島東洋カープは、山本浩二監督体制4年目となる1992年シーズン、球団史上初の連覇を目指してスタートを切りました。V2への期待を背負ったチームは、開幕直後の4月を勝ち越す好調なスタートを見せ、上々の滑り出しに成功します。

5月に入ると成績は五分となりましたが、この年、前年4位ながら最下位に沈む読売ジャイアンツの低迷にも助けられ、Aクラスの位置を維持します。多くの野球ファンは、このまま夏場にかけてヤクルトスワローズとの熾烈な優勝争いが展開されるだろうと予測していました。しかし、6月に入るとチームの歯車が狂い始め、大きく負け越してしまいます。時を同じくして、最下位から猛追を見せた巨人の復活もあり、カープは一気に順位を落とし、Bクラスへと転落してしまいました。

その後、チームは再び持ち直し、シーズン終盤は勝ち越して粘りを見せましたが、開幕当初の勢いを取り戻すことはできず、最終的には10年ぶりとなるBクラスで全日程を終了する結果となりました。前年王者としては悔しいシーズンとなりましたが、チーム内には明るい兆しもありました。

投手陣

投手陣では、前年から先発、そして抑えとしてフル回転していた若きエース、佐々岡真司がこの年やや成績を落としましたが、ベテラン勢がチームを支えました。中でも、長年のキャリアで積み重ねた白星をこの年ついに「200勝」という大記録に乗せた北別府学、そして絶対的な守護神としてブルペンを支え続けた大野豊、さらに実績豊富な左腕である川口和久といった経験豊富な投手が奮闘し、投手陣の中心を担いました。

打撃陣

打撃陣では、新外国人選手として期待されたマーティ・ブラウンが、開幕当初こそ活躍を見せましたが、5月以降はやや成績が低迷します。しかし、彼の常に全力でプレーする「ハッスルプレー」はチームに活気をもたらし、数字以上に貢献する場面が見られました。また、リードオフマンとしてチームを牽引した野村謙二郎や、卓越した打撃センスを見せた前田智徳といった主力選手が堅実に成績を残しました。加えて、5月以降レギュラーに定着した若手の江藤智もまずまずの成績をマークし、将来の主砲候補としての片鱗を見せました。捕手陣では、長年正捕手としてチームを支えてきた達川光男に衰えが見え始めたこともあり、2番手捕手であった西山秀二が出場機会を大幅に増やし、若手の台頭が随所に見られた一年でもありました。

シーズン後の出来事

このシーズン終了後、広島カープの歴史にその名を刻んだ一人の功労者がユニフォームを脱ぎました。5度のリーグ優勝と3度の日本一に正捕手として貢献し、チームの精神的支柱でもあった達川光男が、この年限りで15年間の現役生活にピリオドを打ち、多くのファンに惜しまれながら引退しました。

1992年シーズンは、連覇の夢は叶わなかったものの、ベテランの健在ぶりと若手の成長が同時に見られた、チームの過渡期とも言える一年だったと言えるでしょう。

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