1995年バクー地下鉄火災

1995年バクー地下鉄火災：闇に包まれた惨劇

1995年10月28日、アゼルバイジャンの首都バクーを走る地下鉄で、未曽有の惨事が起きました。ウルドゥズ駅とナリマン・ナリマノフ駅の間で発生した火災は、公式発表で289名もの犠牲者を出す大惨事となりました。この事故は、地下鉄における事故として、現在も世界最多の死者数を記録しています。

事故の背景

事故現場となったのは、バクー北部に位置するウルドゥズ駅とナリマン・ナリマノフ駅を結ぶトンネルでした。このトンネルは換気システムを備えていましたが、断面が狭く、事故発生時の煙の充満を加速させた可能性があります。

事故発生

1995年10月28日午後6時頃、土曜日の夕方ラッシュアワーの時間帯に、事故は発生しました。ウルドゥズ駅を発車した5両編成の列車内で、電気系統の故障が原因とみられる火災が発生。列車はナリマン・ナリマノフ駅に向かう途中、発火からほどなくして停止しました。乗客は煙の臭いに気づき、車両はたちまち黒煙と刺激臭に包まれました。

運転士は直ちに事故を報告し、送電停止を要請しましたが、燃焼する車両の合成素材から発生した一酸化炭素が、乗客の命を脅かしました。ドアが開かない車両もあり、避難は困難を極めました。さらに、事故発生から約15分後、換気システムが排気モードに切り替わったことで、煙は乗客が避難しようとする方向に流れ込み、被害を拡大させました。高圧ケーブルに触れて感電死する人もいたと言われています。

犠牲者の大半は列車内で発見され、多くが折り重なり、圧死や窒息死していました。生存者の証言によると、ウルドゥズ駅を出発直後に高圧ケーブルから火花が散るのを目撃したとのことです。

事故原因の調査

政府調査委員会は、火災の原因を電気系統の故障と結論付けました。しかし、事故車両の側面に不可解な穴が見つかったことや、当初、技術的な故障が原因とされたにもかかわらず、ヘイダル・アリエフ大統領がアメリカの職員に「組織的な破壊行為の可能性がある」と伝えたことなど、真相はいまだ謎に包まれています。

アゼルバイジャン最高裁判所は、刑事上の過失で地下鉄の運転士と駅の交通管制官を有罪としましたが、事故の全容解明には至っていません。

現在も残る謎

1995年バクー地下鉄火災は、多くの犠牲者を出した悲惨な事故であると同時に、多くの謎を残した事件でもあります。事故原因の真相究明、そして、二度とこのような事故が起こらないよう、安全対策の徹底が求められています。

この事故の犠牲者へ哀悼の意を表します。

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