1996年の国際連合事務総長の選出

1996年の国連事務総長選出の経緯

1996年の国際連合事務総長選出は、歴史的な意味を持つ出来事であった。ブトロス・ブトロス＝ガーリが任期満了に向けて再選を試みる中、アメリカ合衆国が拒否権を行使し、選出プロセスは大きな波乱に見舞われた。

ブトロス＝ガーリは元々1期のみの就任を考えていたが、最終的には再選を目指すことを決意した。通常、現職の事務総長は無競争で2期目に立候補する権利が認められており、過去の選出において拒否権によって再任が否定された例はなかった。しかし、今回のケースはその前例を覆す結果となった。

安全保障理事会の構成国の中で、14か国が彼の再選を支持したものの、アメリカは強い反対の意向を示し、これによりブトロス＝ガーリは立候補を取り下げることを余儀なくされた。この動きは、アメリカ国内でのブトロス＝ガーリへの厳しい批判が大きく影響していた。特に、ソマリアでの国連平和維持活動中に発生した米軍の casualties は、ブトロス＝ガーリに対する反発を引き起こした。

この状況下で行われた公開選考では、フランスが英語圏候補者に対する拒否権を行使するなど、複雑な駆け引きがあった。アメリカもまた、フランス語圏候補に拒否権を発動し、選考プロセスは膠着状態に陥った。しかし、最終的にフランスが拒否権を棄権に変えたことにより、コフィー・アナンがデビューを果たすことができた。

アナンは、数回の投票を経て他の候補者に対して強い支持を受けるようになり、1997年1月1日からの任期で事務総長に就任した。1996年の選出過程は、事務総長に対する拒否権行使がもたらす国際政治の複雑性を明示する結果となり、特にアメリカの影響力が強く示された。

その後、アナンは2001年に無投票で再選され、事務総長としての強力なリーダーシップを発揮しつつ、アフリカ出身者が連続してこの地位に就くという新たな歴史を刻むことになった。

この一連の出来事は、国連の選出プロセスが国際関係における強国の意向に大きく左右されることを示す一例であり、今後の国際組織における選出のあり方にも影響を与えることとなった。ブトロス＝ガーリの再選失敗は、アメリカの防衛政策と国際的な役割についての議論を呼び起こし、国連と各国間の繊細な力関係についても考察する機会を与えた。国際政治の舞台における国連の役割が、多くの要因によって変わる可能性を常に孕んでいることを実感させる出来事であった。

もう一度検索