2つのノルウェーの旋律

『2つのノルウェーの旋律』 作品63 について

エドヴァルド・グリーグが1895年に作曲した『2つのノルウェーの旋律』作品63は、2曲からなる弦楽合奏曲です。この作品は、グリーグの民族音楽への関心と、卓越した作曲技術が融合した魅力的な作品として知られています。

概要

この作品は、1895年にライプツィヒのペータース社から出版されました。初演に関する記録は残っていませんが、弦楽合奏版のほか、ピアノ独奏版とピアノ連弾版も出版されており、広く親しまれてきたことが伺えます。

楽器編成

弦楽合奏のために書かれており、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバスによって演奏されます。第1ヴァイオリンには、部分的に独奏パートが設けられています。また、チェロ以上のパートはそれぞれ2つに分かれており、最大で9つのパートで演奏されることもあります。

演奏時間

第1曲：約7分
第2曲：約4分
合計：約11分

曲の構成と内容

第1曲：民謡の調子で (Im Volkston)

この曲は、フレデリック・ドゥエ（Frederik Due, 1853年 - 1906年）の旋律を基に作曲されています。ドゥエは、ノルウェーの外交官であり、パリ駐在大使などを務めましたが、アマチュアの音楽家としても活動し、歌曲やピアノ曲を作曲していました。グリーグは1894年にパリでドゥエと出会った際にこの旋律を贈られ、それを元にこの曲を作曲しました。

曲は、主題を提示した後、それを5回変奏するというシンプルな構成です。民謡風の親しみやすい旋律が、変奏によって多様な表情を見せる点が特徴的です。

第2曲：牛寄せ歌と足踏み踊り (Kuhreigen und Bauerntanz)

この曲は、2つの小曲が連続して演奏される構成になっています。曲名は、菅野宏和氏によって付けられたもので、原題の直訳ではありません。しかし、作品の素材となった原曲の原題や内容を考慮し、より作品の内容に沿うように意図されています。

牛寄せ歌 (Kuhreigen)
グリーグの作品17『25のノルウェーの民謡と舞曲』の第22曲「湿原に呼ばわる（牛寄せ歌）」の旋律が用いられています。静かで牧歌的な旋律が、ゆったりとした雰囲気を醸し出します。

足踏み踊り (Bauerntanz)
同じく作品17の第18曲「つまづき踊り」の旋律が用いられています。リズミカルで活気のある旋律が、聴く人を引き込みます。2つの小曲は対照的な性格を持ちながらも、全体として統一感のある印象を与えます。

まとめ

『2つのノルウェーの旋律』作品63は、グリーグの民族音楽への深い愛情と、それを芸術的な作品へと昇華させる卓越した作曲技法が結実した作品です。弦楽合奏という編成でありながら、親しみやすく魅力的な旋律が、聴く人を魅了します。また、ピアノ版も存在しており、より幅広い層に親しまれています。この作品は、グリーグの作品の中でも比較的演奏機会が多く、その美しい旋律は、多くの人に愛され続けています。

参考資料

『作曲家別名曲解説ライブラリー18 北欧の巨匠』（音楽之友社、1994年）「2つのノルウェーの旋律 op.63」p.41-43（菅野宏和執筆）

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