2002年オーストリアグランプリ

2002年オーストリアグランプリ：チームオーダーと波紋

2002年F1世界選手権第6戦、オーストリアグランプリは、A1リンクを舞台に、5月12日に開催されました。予選ではルーベンス・バリチェロが今シーズン2度目のポールポジションを獲得。決勝レースは、バリチェロがトップでスタートし、ミハエル・シューマッハが2位に続きました。3位にはザウバーのニック・ハイドフェルドが好スタートを切り込みました。

レース序盤は、後方で複数のリタイヤが発生。ハイドフェルドも順位を落としました。20周目を過ぎた頃には、アラン・プロストがエンジントラブルによりスピン、コース上に停止。これによりセーフティカーが導入されました。セーフティカーラン中に各車がピットインする中、レース再開直後、まさかのアクシデントが発生します。高裕祥のタイヤロックから白い煙が発生し、ハイドフェルドがスピン。周回遅れの佐藤琢磨選手が巻き込まれ、リタイヤを余儀なくされました。佐藤選手はヘリコプターで病院へ搬送されました。

レース終盤、フェラーリはバリチェロとシューマッハの2台でピットインを行い、順位を入れ替えてレースに復帰。しかし、チェッカーフラッグ目前、バリチェロはシューマッハに順位を譲りました。2年連続となるこのフェラーリのチームオーダーは、世界中で大きな議論を呼びました。ホームストレートや表彰式では、フェラーリのドライバーたちにブーイングが浴びせられました。フェラーリは「シューマッハにポイントを多く獲得させるため」と説明しましたが、この判断は後に疑問視されることになります。なお、この優勝により、シューマッハは2002年シーズン全レースで優勝経験を持つ唯一のドライバーとなりました。

レース後、フェラーリ、シューマッハ、バリチェロの3名に対して、表彰式の違法性を理由とした罰金ペナルティが科せられました。シューマッハがバリチェロに優勝トロフィを渡した行為、そしてシューマッハがバリチェロを1位の場所に立たせた行為が問題視されたのです。このチームオーダー問題を背景に、2003年シーズンからはチームオーダーが禁止され、無線への規制も強化されました。

アクシデントに巻き込まれたハイドフェルドと佐藤は、幸いにも重傷は免れましたが、ヘリコプターで病院へ搬送されました。このレースでは、ジャンカルロ・フィジケラが5位入賞を果たし、ジョーダンチームが2ポイントを獲得。これにより、今シーズン出場した11チームのうち、ポイントを獲得していないのはBARホンダのみとなりました。

レースのラップリーダーは、バリチェロが69周（1-61周、63-70周）、シューマッハが2周（62周、71周）を走行しました。このオーストリアグランプリは、フェラーリの戦略、ドライバー、そしてF1を取り巻く状況を象徴する、記憶に残る一戦となりました。チームオーダーの是非、ドライバーのスポーツマンシップ、そして安全性の問題など、多くの議論を巻き起こしたレースとして、F1の歴史に刻まれています。第5戦終了時点でのドライバーズランキング、コンストラクターズランキングの上位5チームも注目すべき点です。 このレースの結果は、シーズン全体の争いに大きな影響を与え、今後のレース展開を大きく左右することとなりました。 特に、チームオーダーに対する批判は、F1のルールやレギュレーションの見直しを促すきっかけとなり、現代F1のあり方に影響を与えたと言えるでしょう。

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