2004年スリランカ津波列車事故

2004年スリランカ津波列車事故の概要

2004年12月26日、スリランカ沿岸部を走行中の列車が、スマトラ島沖地震によって発生した津波に襲われ、多数の死傷者を出すという未曾有の惨事となりました。この事故は、2023年1月時点で、史上最悪の鉄道事故として記録されています。

事故発生の背景

当時、コロンボからゴールへ向かう定期列車「#50 マータラ・エクスプレス」は、多くの乗客を乗せて運行していました。乗客の中には、正規の乗車券を持った人々の他に、政府の許可を得た人々も含まれていました。地震発生後、スリランカの地震観測所は揺れを観測しましたが、津波が陸地に到達するとは予測していませんでした。マラダーナ駅の指令所は、津波警報を受け、運行中の列車に停止を指示しようとしましたが、「マータラ・エクスプレス」との連絡には失敗しました。これは、沿線の駅員が避難していたり、津波に巻き込まれてしまったりしていたためでした。

津波に襲われた列車

午前9時30分頃、テルワッタに近いペラリア村付近の海岸に、最初の巨大な波が押し寄せました。周囲には水位上昇を知らせる警報が鳴り響く中、列車は水に囲まれ停車。多くの地元住民が、水に流されないように列車によじ登ったり、隠れたりしました。最初の波が客車内に浸水すると、乗客はパニック状態に陥りました。約10分後、さらに巨大な波が列車を襲い、線路脇の木や建物に叩きつけました。これにより、避難しようとしていた人々が押しつぶされました。

満員だった8両の客車は浸水し、ドアが開けられない状態となりました。乗客の多くは車内で溺死しました。車両の上部にいた人々は、波にさらわれ溺死したり、流れてきた瓦礫によって命を落としたりしました。機関車は100メートル先の沼まで流され、機関士と助士は死亡しました。津波の高さは海抜7.5～9メートルに達し、列車の最高部よりも2～3メートル高かったと推定されています。

甚大な被害

津波による災害規模が非常に大きかったため、地元当局や救急サービスは対応能力を超えていました。政府が列車の位置を把握できたのは、事故発生から数時間後でした。救助活動は遅れ、負傷者は救助を待つ間に死亡するケースが多く見られました。犠牲者の遺体は、1週間以上経ってから回収されたものもありました。多くの人々が、家族を探しに現地を訪れました。コロンボから派遣された法医学チームは、バタポラ病院で身元不明の遺体の写真と指紋を記録しました。

スリランカ政府の発表によると、生存者は150人余り、推定死亡者数は少なくとも1700人に達し、2000人を超える可能性も指摘されています。しかし、回収された遺体は約900人分で、残りは海に流されたり、親族によって持ち去られたりしたとされています。ペラリア村はほぼ壊滅状態となり、数百人の住民が犠牲となりました。身元不明の遺体は200体以上が、線路近くに埋葬されました。

事故後の状況

事故後、復旧した線路は、事故を生き延びた車掌によって運行が再開されました。線路沿いの再建された町では、1周年の式典が開催されました。事故で流された機関車と客車2両は修復され、機関車には追悼の意を込めて波のペイントが施されました。現在、この機関車は毎年慰霊式典のためにペラリアを訪れています。

この事故は、自然災害の恐ろしさと、人命の尊さを私たちに改めて教えてくれる悲劇です。

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