2005年憲法改革法

2005年イギリス憲法改革法：司法制度改革の中核

2005年憲法改革法は、イギリスの憲法制度に抜本的な変更を加えた画期的な法律です。長年にわたる議論と改革の努力の末、2005年3月21日に議会を通過し、女王の裁可を得て成立しました。この法律の主要な目的は、連合王国最高裁判所の設立と、大法官の権限見直し、そして裁判官任命制度の改革にありました。本稿では、成立までの経緯と、法律の内容について詳細に解説します。

成立までの道のり：激論と妥協

法案は2004年2月24日、貴族院で提出されました。当初は、大法官の廃止、連合王国最高裁判所の設立、常任上訴貴族の最高裁判所への移行、そして首席判事と枢密院司法委員会の改革などが盛り込まれており、激しい議論を呼びました。特に大法官の廃止については、伝統的な権威を揺るがすものとして強い反発がありました。

貴族院での審議は難航しましたが、最終的には大法官の職位は存続することとなりました。しかし、その権限は大幅に縮小され、司法に関する職務の大半が新たな憲法事項担当大臣（後に司法大臣に改称）に移管されました。これにより、大法官が自動的に貴族院議長を兼任することもなくなりました。また、国璽尚書については、当初委員会制への移行が提案されましたが、最終的には大法官の兼任のまま維持されることとなりました。

様々な議論と修正を経て、法案は2005年3月21日に議会を通過し、同月24日に女王の裁可を得て正式に法律として成立しました。

法律の内容：司法制度の変革

この法律は、大法官の役割、最高裁判所の設立、そして裁判官の任命制度という三つの主要な柱で構成されています。

大法官の役割の変化

大法官の権限は大幅に縮小されました。特に、司法に関する職務の大半は司法大臣に移管され、貴族院議長を自動的に兼任する制度も廃止されました。ただし、大法官の職位自体は存続し、新たな就任宣誓の規定が設けられました。

最高裁判所の設立と機能

この法律の最大の成果は、連合王国最高裁判所の設立です。貴族院の司法機能と枢密院司法委員会の一部機能が最高裁判所に移譲されました。最高裁判所には12名の裁判官が任命され、その任命は特許状によって行われます。最初の12名の裁判官は、常任上訴貴族がそのまま就任しました。裁判官は原則として終身在職ですが、死亡や議会の解任決議によって空位が生じた場合は、最高裁判所任命委員会が後任を指名します。大法官（後に司法大臣）は、指名された人物に対して一度だけ拒否権を行使できます。

裁判官任命制度の改革

それまでの裁判官任命は、君主が大法官の助言に基づいて行われていました。しかし、この制度は独立性や透明性に欠けるとして批判されていました。この法律では、独立した裁判官選考委員会が設立され、より透明性が高く、独立性の高い裁判官任命制度が確立されました。最高裁判所の裁判官の任命要件として、弁護士として15年以上の実務経験、または高位の法曹界官職を2年以上務めた経験が求められるようになりました。

まとめ：現代イギリス司法制度の礎

2005年憲法改革法は、イギリスの司法制度に大きな変革をもたらしました。最高裁判所の設立は、司法権の独立性を高め、司法制度の透明性を向上させる上で重要な一歩となりました。また、大法官の権限縮小と裁判官任命制度の改革は、司法の公平性と効率性を高めるための重要な措置でした。この法律は、現代イギリスの司法制度の礎を築いた重要な法律として位置付けられています。

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