2013年ランペドゥーザ島難民船沈没事故

2013年ランペドゥーザ難民船沈没事故

概要

イタリア最南端のランペドゥーザ島周辺海域は、アフリカや中東からヨーロッパを目指す多くの難民・移民にとって、危険な海の道の途上に位置する。2013年10月、この地中海でわずか8日間のうちに2件の大規模な難民船沈没事故が連続して発生し、多数の命が失われた。これらの悲劇は、地中海を渡る危険な旅の実態と、難民・移民問題に対する欧州および国際社会の喫緊の課題を浮き彫りにした。

1度目の事故：10月3日

最初の事故は10月3日未明、ランペドゥーザ島沖合約0.5海里の地点で発生した。リビアからイタリアへ向かっていた約500人以上を乗せた木造船が、エンジントラブルに見舞われた。乗船者の大半はエリトリア、ソマリア、ガーナなどアフリカ出身者だった。救助を求めようと船上で火をつけたところ、船内のガソリンに引火して炎上。火災とパニックにより船体バランスが崩れ、転覆・沈没した。イタリア沿岸警備隊は155人の生存者を救助したが、水深47メートルに沈んだ船体からの捜索が進むにつれ、犠牲者数が判明。最終的に360人以上が死亡したと報告されている。事故後、この航海を計画したとされる複数の密航斡旋容疑者が逮捕され、組織的な犯罪行為の実態が明らかになった。生存者からは、密航業者への高額な支払いや、払えない人々への虐待があったことも証言されている。

2度目の事故：10月11日

1度目の事故から8日後の10月11日、ランペドゥーザ島から東へ約120キロメートル離れたマルタ領海内で、再び難民船が転覆した。この船にはシリアやパレスチナからの200人以上が乗船していたとみられる。上空の航空機に注意を引こうと乗船者が船の一方に集まった結果、バランスを失い転覆した。マルタ当局を中心に救出活動が行われ、計203人が救助されたが、少なくとも34人の死亡が確認された。この事故に関連しても、後日、密航に関与した疑いでパレスチナ人男性が逮捕されている。

事故がもたらした反響

相次ぐ悲劇は欧州に強い衝撃を与え、難民・移民問題への対応の遅れを指摘する声が上がった。教皇フランシスコ、イタリアのレッタ首相らが哀悼の意を示し、イタリア政府はこれを欧州全体の課題として、EUの協力を強く求めた。欧州委員会は地中海での捜索・救助活動強化やイタリアへの財政支援を表明し、欧州委員長らがランペドゥーザ島を訪問した。マルタのムスカット首相は他のEU加盟国の行動不足を批判し、「私たちは地中海の中に墓地を作っている」と述べた。国連事務総長は根本原因究明と人道的な対策を国際社会に求めた。これらの事故は、地中海ルートの危険性、人身売買組織の存在、そして人道的危機への連携した対応の必要性を改めて浮き彫りにする出来事となった。これを契機に、地中海での救助活動や難民受け入れに関する議論が進んだ。

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