2019年岩手県議会議員選挙

2019年岩手県議会議員選挙の概観

岩手県の重要な意思決定機関である県議会を構成する議員を選出するため、2019年9月8日に投開票が行われた地方選挙が、この2019年岩手県議会議員選挙です。この選挙には、東日本大震災が発生した2011年以降、岩手県独自の事情により統一地方選挙とは異なる日程で実施されてきたという背景があります。2019年度の選挙も、全国的な第19回統一地方選挙の日程とは別に行われました。

選挙の最大の焦点は、同日に行われた岩手県知事選挙の行方と、それに伴う現職・達増拓也県政の継続か刷新かでした。県議会における各党派の勢力図が、知事の県政運営に大きな影響を与えるため、この二つの選挙は密接に関連していました。

また、この選挙は、2019年5月1日に新しい元号「令和」に改元されてから、全国で初めて実施された都道府県議会議員選挙としても注目を集めました。

基礎データと立候補状況

選挙の公式な日程は、2019年9月2日に告示され、9月8日に投票および開票が行われました。改選される県議会議員の定数は48議席。選挙区は県内を地理的に分割した16の地域に設定されていました。しかし、このうち7つの選挙区（宮古、滝沢、釜石、二戸、八幡平、遠野、陸前高田、九戸）では、候補者数が定数を超えなかったため、競争のない無投票当選となりました。結果として、全体の当選者48名のうち、15名が投票を経ずに議席を得ることとなりました。

立候補者の総数は62名でした。これは前回の2015年選挙と比べて1名少なく、戦後の岩手県議会議員選挙としては過去最少の立候補者数となりました。このことは、一部の選挙区における候補者擁立の難しさや、無投票当選区の増加につながった一因と考えられます。選挙人登録者数は、投票日直前の同年8月29日時点で1,060,326人でした。

選挙結果と議会勢力の変化

2019年9月8日の投票率は54.87%でした。これは前回の選挙と比較して2.06ポイント上昇しており、同日に行われた知事選挙も影響して有権者の関心が高まったことがうかがえます。

選挙の結果、各党派の当選者数は以下のようになりました（無所属含む）。

自民党：14議席
公明党：2議席
国民民主党：9議席
日本共産党：3議席
社会民主党：1議席
いわて県民クラブ：5議席
無所属（立憲民主党籍）：2議席
無所属（その他）：12議席

選挙後の県議会における会派構成にはいくつかの変化が見られました。

告示前、県政与党として達増県政を支えていた国民民主党は、同時期に自由党を吸収合併しましたが、党内の旧小沢グループとそれ以外の間で対立が生じ、無所属での出馬を選択する議員が少なくありませんでした。その結果、国民民主党の公認候補としての当選者は9議席に留まりましたが、無所属で当選した旧国民民主党系の議員の多くは、県政与党会派「きぼう岩手」（従来の会派名を「改革岩手」から変更）に参加しました。「きぼう岩手」は引き続き議会内の第一会派となりましたが、その議席数は無所属議員の動向によって変動しました。

一方、県政野党の自民党は、改選前から1議席増やし14議席を獲得しました。公明党は改選前の2議席を維持しましたが、同日実施の知事選挙で推薦候補が大敗したことの影響が大きく、選挙後の議長選を巡る会派離脱者も出るなど、第一会派の座を獲得するには至りませんでした。公明党の議席維持は、引退議員の地盤を新人が引き継ぐ形でした。

日本共産党（3議席）と社会民主党（1議席）は、それぞれ改選前の議席数を維持しました。また、県政野党である「いわて県民クラブ」も、現職候補5名全員が当選し、勢力を維持しました。

この選挙結果を受けても、議会内で過半数（25議席）を占める勢力は生まれませんでした。反達増県政を掲げる自民党（14）、公明党（2）、いわて県民クラブ（5）を合わせても合計21議席となり、過半数には届きませんでした。一方、達増県政を支持する勢力（国民民主党公認9議席に加え、きぼう岩手に参加する無所属議員、日本共産党3議席、社会民主党1議席など）を合わせても、単独での過半数確保は困難な状況でした。

こうした中、特定の勢力に偏らない中間派として位置づけられていた会派「創成いわて」は、「いわて新政会」と名称を改め、引き続き議会運営における決定権を持つ「キャスティング・ボート」の役割を担う存在となりました。特に、同日知事選で達増氏を推薦した立憲民主党推薦の無所属議員2名がこの「いわて新政会」に参加したことは注目されました。

結論

2019年の岩手県議会議員選挙は、震災後の独自の選挙日程や、同日知事選との連動、そして令和最初の都道府県議選という側面を持ちました。結果として、どの会派も単独で過半数を獲得できない多極的な議会構成が維持され、中間派である「いわて新政会」の存在感が引き続き重要な要素となりました。これは、今後の岩手県政の舵取りにおいて、幅広い合意形成や会派間の連携が不可欠であることを示唆する結果となりました。

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