2022年のロシアの動員

2022年ロシアの動員

2022年9月21日、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、ウクライナ侵攻の戦況悪化を受けて、ロシア連邦軍への部分的な動員を発表しました。この動員令は、ハルキウ州でのウクライナ軍の反撃成功直後、およびロシアが編入を企図する占領地での住民投票実施発表の翌日に出されました。

動員発表の背景

プーチン大統領は、今回の動員は国防省と軍参謀総長の提案によるものだと説明しました。セルゲイ・ショイグ国防相は、30万人の予備役動員を計画していると発表し、「莫大な動員予備力」を強調しました。プーチン大統領はこれまで動員を避けてきましたが、ハルキウ州での敗退や主戦派からの圧力により、動員を決断したとみられています。過去には、日露戦争、第一次世界大戦、第二次世界大戦中に動員が実施されています。

動員発表に先立ち、プーチン大統領は、ウクライナにおけるロシアの目標は変わらないと主張しました。また、アメリカやヨーロッパ諸国がロシアに対して「核による恫喝」を行っていると非難し、自国の核兵器の存在を強調しました。さらに、占領地での住民投票の実施を正当化し、これらの地域がロシアの一部となる道を切り開きました。

動員の内容

動員令は、予備役の市民、特に軍務経験がある者を対象としており、動員された市民は契約軍人と同じ待遇を受けるとされました。しかし、実際には、軍務経験のない市民も動員対象となり、動員された市民の訓練や装備が不十分であるという報告も多くありました。動員令には、軍産複合体の従業員には徴兵猶予が与えられるという条項も含まれていました。

また、動員発表の前日には、刑法が改正され、「動員」「戒厳令」「戦時」の概念が導入されました。この改正により、軍の脱走や命令不服従に対する罰則が強化され、最大10年の懲役刑が科されることとなりました。これは、動員された兵士の士気を維持し、軍の統制を強化する目的があったと考えられます。

国内外の反応

動員発表後、ロシア国内では動員を逃れるための出国が相次ぎ、モスクワやサンクトペテルブルクなどの主要都市では、動員に反対するデモが発生しました。これらのデモは警察によって弾圧され、多くの参加者が拘束されました。また、軍事委員会や地方行政機関への放火事件も相次いで発生しました。

国際社会は、プーチンの動員決定をウクライナ侵攻の失敗の証拠と見なし、ロシアへの制裁を強化しました。また、一部の国は、動員を逃れてきたロシア人に対して亡命許可を出すことを拒否しました。一方で、ドイツのように、兵役を拒否するロシア人に亡命の受け入れを表明する国もありました。

ロシア軍の損失と囚人の勧誘

ロシア国防省は、ロシア軍の死者数を5,937人と発表しましたが、この数字は実際の死者数よりも少ないと見られています。ウクライナ軍は、ロシア軍の損失を5万5100人と発表しています。また、ロシアの民間軍事会社ワグナー・グループは、刑務所を訪問して囚人を勧誘し、戦場に送っていることも判明しています。

動員後の混乱と問題点

動員令発表後、ロシアでは、動員の対象となるはずのない人々が徴兵されたり、十分な訓練や装備が提供されないまま戦場に送られたりするなど、多くの混乱が見られました。また、動員を逃れようとするロシア人が殺到し、周辺国への出国ラッシュが発生しました。このような状況は、動員が必ずしもスムーズに進んでいないことを示しています。

少数民族への動員

ロシア連邦は多民族国家ですが、動員が少数民族に偏っているという指摘があります。クリミアでは、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領が、ロシア支配に反発するクリミア・タタール人が多数動員されていることを非難し、「新たなジェノサイド政策」と批判しました。また、モンゴル元大統領のツァヒアギーン・エルベグドルジは、ロシア連邦内の少数民族が「大砲の餌として使われている」と批判し、これらの民族の難民を保護する用意があることを表明しました。

ウクライナの反応

ウクライナ当局は、強制動員されてウクライナに派遣されたロシア人に対して降伏を呼びかけ、降伏した者には安全が保証されると発表しました。ゼレンスキー大統領は、降伏したロシア兵士が自発的な降伏であれば、その情報がロシア側に漏れないように配慮すると約束しました。また、今回の動員を「ロシア人を処分するための複雑な計画」と批判しました。

動員の影響

動員によってロシアが今後数か月で戦闘力を大幅に向上させる可能性は低いと専門家は指摘しています。ロシア軍の予備役は戦闘経験が少なく、訓練や装備も不十分であるため、動員による戦力強化は限定的です。また、動員はロシア国内の混乱と反発を引き起こし、プーチン政権に対する国民の不満を高める要因ともなっています。

動員によって、ロシアは戦争遂行のための人員を確保しようとしていますが、その結果として生じた混乱や反発は、ロシアにとって大きな代償となる可能性があります。

結論

2022年ロシアの部分動員は、ウクライナ侵攻におけるロシアの苦戦を象徴する出来事でした。動員は、ロシア国内の政治的な緊張を高め、国際社会からの批判を招きました。また、動員された兵士の質の低さや装備不足は、ロシア軍の戦闘力にも疑問符を投げかけました。今後の動向によっては、ロシア社会に大きな変化をもたらす可能性もあります。

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