2022年ウクライナ難民危機

2022年ウクライナ 難民危機

2022年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻は、第二次世界大戦以降ヨーロッパで最大規模の難民危機を引き起こしました。侵攻により、750万人以上の人々がウクライナを離れ、5月3日までに約800万人が国内避難民となっています。3月20日までに、ウクライナの総人口の約4分の1が自宅を離れました。難民の9割は女性と子供で構成されており、3月24日までにウクライナの全児童の半数以上が家を離れ、そのうち4分の1が国外へ避難しました。

難民の発生と移動

難民の多くはウクライナの西側に位置する近隣諸国に直接入国しました。ポーランドは390万人の難民を受け入れ、ルーマニア、モルドバ、ハンガリー、スロバキアなども多くの難民を受け入れています。一部の難民はさらに西のヨーロッパ諸国へ移動しましたが、厳しい労働市場や都市の受け入れ態勢などの要因から、ポーランドや中央ヨーロッパ諸国に留まる傾向が強いと指摘されています。欧州連合（EU）はウクライナ難民の入国を許可し、一時的な保護指令を発動しました。しかし、一部の非ヨーロッパ人やロマからは国境での人種差別が報告されています。

2022年侵攻以前の難民

2014年のロシアによるクリミア併合やドンバスでの戦争により、すでに200万人以上の難民や国内避難民が発生していました。これらの人々は「ヨーロッパの忘れられた難民」と呼ばれることもあります。

避難の状況

鉄道は難民の移動において重要な役割を果たしました。ウクライナ鉄道は、侵攻開始から3週間で250万人の乗客を輸送しました。列車は過積載になることも多く、損傷した線路を避けるために速度を落とし、夜間はライトを消灯して運行されました。ヨーロッパ各国の鉄道会社は、ウクライナ難民に無料で列車での移動を許可しました。

西部の都市リヴィウは難民の重要な拠点となり、国境越え地点への輸送が行われました。メディカからは、ほとんどの難民がポーランドのプシェムィシルへと向かいました。

国境を越えた人々の数は常に変動しており、推定値に過ぎないことが多いです。ウクライナ人はヨーロッパのいくつかの国にはビザなしで渡航でき、長期滞在が認められています。国連人道問題調整事務所は、2ヶ月後には国内避難民が750万人、医療を必要とする人が1200万人、戦火から逃れた人が400万人に達すると推定しました。国連難民高等弁務官事務所（UNHCR）は、この状況を第二次世界大戦以降、ヨーロッパで最も急速に拡大している難民危機としています。

関係する国々

ポーランド

ポーランドは、ロシアによる攻撃の可能性を予測し、最大100万人の難民を受け入れる準備をしました。6月13日までに約400万人のウクライナ難民がポーランドに入国しました。ポーランド政府は難民のために集合場所を開設し、宿泊施設や食料を無料で提供しています。ポーランドはウクライナ人を雇用するための法改正を準備しています。

ルーマニア

ルーマニア政府は5月27日までに989,357人のウクライナ人がルーマニアに入国したと報告しています。3月15日時点で約8万人が国内に留まっています。

ロシア

ロシアは、ウクライナから強制的に連行した難民を97万1417人受け入れたと発表しました。ウクライナ外務省は、ロシア占領地から2389人のウクライナ人の子供が誘拐され、ロシアに移送されたと主張しています。

ハンガリー

ロシアの侵攻開始から6月13日までに、76万4,216人の難民がハンガリーに到着しました。シェンゲン圏内では国境検問がないため、ハンガリーは何人が他のシェンゲン圏の国に移動したのかを把握していません。

モルドバ

モルドバも難民を最初に受け入れた国の一つです。6月13日現在、498,896人のウクライナ人難民がモルドバに入国しています。モルドバはヨーロッパで最も貧しい国の一つであるにもかかわらず、人口当たりの難民受け入れ数が最も多い国です。モルドバは国際援助を受けており、ルーマニアやドイツなどの国も難民受け入れを支援しています。

スロバキア

6月13日までに、501,335人のウクライナ難民がスロバキアに入国しています。

ベラルーシ

ベラルーシ政府によると、5月29日までに30,092人がベラルーシに渡りました。

その他の欧州諸国

EUは一時的保護指令を発動し、ウクライナ難民にEU加盟国での滞在、労働、学習の権利を与えています。各国の状況は以下の通りです。

オーストリア：難民受け入れの意思を表明。
ベルギー：一時保護登録された難民は3万人を超えています。
ブルガリア：約18万人のウクライナ人が入国し、8万7千人が滞在しています。
クロアチア：約2万人のウクライナ難民が入国しています。
キプロス：約1万人の難民を受け入れています。
チェコ：30万人以上の難民を受け入れています。難民の収容能力が限界に近づいており、難民キャンプの建設を検討しています。
デンマーク：約24,000人の難民が登録されています。最終的には10万人を超える可能性があると予測されています。
エストニア：約4万人の難民を受け入れています。
フィンランド：約1万5千人の難民を受け入れています。
フランス：約9万人の難民を受け入れています。
ジョージア：2万人を超える難民を受け入れています。
ドイツ：約24万人の難民が入国しています。
ギリシャ：1万6千人以上の難民を受け入れています。
アイスランド：800人以上の難民が亡命を申請しています。
アイルランド：2万人以上の難民が到着しています。4月末までに4万人を受け入れると予想されています。
イタリア：13万人以上の難民を受け入れています。
ラトビア：3万人以上の難民を受け入れています。
リトアニア：約5万人の難民を受け入れています。
ルクセンブルク：難民の受け入れ体制を整備しています。
オランダ：難民を受け入れるための体制を強化しています。
ポルトガル：3万人以上の難民を受け入れています。27,000人のウクライナ人移民もいます。
セルビア：6,000人以上の難民を受け入れています。
スロベニア：18,000人以上の難民を受け入れていますが、多くの難民は他国へ移動しています。
スペイン：3万人のウクライナ難民に一時保護資格が付与されています。難民の多くは親戚や友人の家に滞在しています。
スウェーデン：約5,000人の難民が登録されています。実際にはもっと多いと見られています。
スイス：2万人以上の難民が登録されています。
イギリス：6万人以上の難民を受け入れています。

その他の国々

アルゼンチン：人道的ビザで難民を受け入れています。
オーストラリア：難民ビザを優先的に処理しています。
ブラジル：人道的ビザで難民を受け入れています。ウクライナ系住民が約60万人います。
カナダ：ウクライナ人家族の再会を支援する計画を発表し、多くの難民を受け入れています。
エジプト：ウクライナ人観光客の出国を支援しています。
イスラエル：約3万6千人のウクライナ人を受け入れています。
日本：1222人の難民を受け入れています。
韓国：光州市北郊外に「高麗村」があり、多くの難民を受け入れています。
フィリピン：難民・庇護希望者の受け入れに応じると表明しています。
スリランカ：ロシア人とウクライナ人に無料ビザを付与しています。
トルコ：8万人以上の難民を受け入れています。
* アメリカ合衆国：最大10万人の難民を受け入れると発表しました。

国際支援

ユニセフ、国連難民高等弁務官事務所、国際救援委員会などが難民支援のための寄付を受け付けています。アメリカ下院は、難民支援に9億ドルを提供する法案を可決しました。

人身取引に関する懸念

難民が人身売買や搾取、性的暴力の危険に晒されているという懸念があります。欧州評議会の人身売買対策専門家グループや援助団体は、注意を呼びかけています。国境付近で支援のため滞在していた難民が性売買目的で連れ去られそうになったり、難民向けに宿泊施設を提供すると申し出た男性が難民の女性を強姦した事件も報告されています。

同伴者なしの未成年者

ユニセフとUNHCRは、同伴者なしで移動する未成年者について懸念を示しており、保護を呼びかけています。ウクライナには侵攻に巻き込まれた約1万人の生徒を収容する施設養護学校や寄宿学校があります。

強制連行

ウクライナ当局は、ロシアが難民を強制的に移動させていると主張しています。ロシアに到着した数千人の難民は「ろ過センター」を使って強制的に移動させられていると報告されています。

難民危機における性的暴力

ウクライナからの難民の中には、避難先で性的暴力を受けた事例が報告されています。難民向けの住宅計画で男性が難民の女性に性的関係を強要したという報道もありました。

人種差別

国境警備隊やその他の当局による非ヨーロッパ系やロマニ系の人々に対する差別の訴えが報告されています。アフリカ連合は人種差別だと批判し、ウクライナ政府は問題解決に努力すると述べました。一部の西側メディアや政治家によるウクライナ難民の描写は、他の難民との扱いの違いが批判されています。

動物

家畜や動物園の動物も侵攻に巻き込まれました。多くのEU当局や近隣諸国政府はペットが飼い主と一緒に国境を越えるために必要な条件を削除または緩和しています。動物保護施設や国際機関が動物への支援を行っています。

脚注

注釈

出典

ノート

外部リンク

もう一度検索