2024年に発覚した東京女子医科大学寄付金問題

東京女子医科大学寄付金問題とは

2024年に発覚した東京女子医科大学の寄付金問題は、同大学における教員の採用・昇進、および医学部受験生の合否判定において、寄付金が不適切な判断材料とされていた一連の問題です。この問題は、大学の運営体制や倫理観に大きな疑問を投げかけ、社会的な信頼を大きく損なう事態となりました。

問題の概要

東京女子医科大学では、2018年5月に理事会が、卒業生が教員ポスト（教授、准教授、講師など）への就職・昇進を希望する際、同窓会組織である「至誠会」が発行する「活動状況報告書」を評価対象とする制度を導入しました。この報告書には、「寄付などの状況を鑑み、活動が認められない場合は評価に影響します」との留意事項が記載されており、実際には、至誠会への寄付額に応じてポイントが加算される仕組みとなっていました。

さらに、医学部の子女枠推薦入試においても、寄付金額を点数化した「貢献度」が合否判定に用いられていました。推薦入試の面接では、保護者に直接寄付を打診する事例もあったと報道されています。これらの事実は、大学が教育機関としての公平性を著しく損ない、社会からの信頼を大きく失う要因となりました。

2024年12月13日、大学は改善計画を公表し、入試との関係が疑われる場面での寄付の受領を「問題」と認め、得点操作による順位の入れ替えがあったことを明らかにしました。また、学内人事において寄付額が考慮されていた制度も「不適切だった」としました。具体的な改善策として、2026年度から卒業生の親族を対象とした推薦入試を廃止し、過去に受け付けた寄付金を返金することを発表しました。

教員採用と医学部入試における問題点

教員採用

2018年5月に導入された寄付金制度では、教員の採用・昇進において、教育、研究、診療実績に加え、「社会貢献」という項目が評価基準とされていました。この「社会貢献」の中に、至誠会への寄付額がポイントとして評価されていたのです。大学側は「寄付を強要したわけではない」と主張していますが、文部科学省は運用実態を調査し、報告を求めています。第三者委員会の調査報告書では、寄付額が点数化され、多くの申請者が寄付をしていたことが明らかになり、寄付と人事評価の関連性が認められました。この事実は、寄付額によって人事評価が左右されるという点で、社会的な理解を得るのが難しいと批判されました。

医学部入試

医学部の子女枠推薦入試では、至誠会が寄付金額を「貢献度」として点数化し、筆記、面接、高校の内申点の合計点に加算していました。2019年の入試では、推薦枠を超えて「貢献度」の高い受験生が推薦されるケースもありました。文部科学省は、大学側から「寄付金額で合否を判断した事実はない」という回答を受けましたが、詳細な報告を求めています。第三者委員会は、寄付実績のない受験生が、高額な寄付をした受験生に順位を抜かれた事例や、面接後に寄付を求められた事例を報告し、入試における寄付金の受け取りが文部科学省の通知に反する可能性を指摘しました。

問題発覚後の動きと改善策

問題発覚後、大学は第三者委員会を設置し、調査を行いました。その結果、寄付金が人事評価や入試選考に影響を与えていた事実が明らかになりました。大学はこれを受け、関係者への処分や制度の見直しを含む改善計画を発表しました。具体的には、以下の点が挙げられます。

推薦入試の廃止: 2026年度から、卒業生の親族を対象とした推薦入試を廃止します。
寄付金の返金: 過去に受け付けた寄付金を返金します。
至誠会ポイント制度の廃止: 教員採用・昇進における至誠会ポイント制度を廃止します。
弥生塾ポイント制度の廃止: 弥生塾の履修・修了が昇進・昇格で考慮される制度を廃止します。
理事会の刷新: 理事長を含む理事全員が辞任し、新しい体制が発足しました。
A元理事長の法人運営への関与を禁止: 問題の根源とされたA元理事長の法人運営への関与を将来にわたって禁止しました。

歴史

2002年: 文部科学省が、私立大学に入学に関する寄付金の収受を禁じる通達を出します。
2018年:
「至誠と愛推薦」が開始されます。
教員採用・昇進における「活動状況報告書」評価制度が開始されます。
2019年: 文部科学省が推薦入試時の寄付金を把握し、大学に説明を求めますが、大学は事実を否定します。
2023年:
至誠会の会長が解任されます。
大学が至誠会との関係解消を決議します。
2024年:
「至誠と愛推薦」が廃止され、「卒業生子女推薦」に変更されます。
至誠会に家宅捜索が入ります。
文部科学省が教員採用時の寄付金について大学に報告を求めます。
大手マスコミが寄付金問題を報道します。
大学が第三者委員会を設置します。
至誠会が寄付金によるポイント制度の事実を認めます。
大学教授らが文部科学省に改善を求める要望書を提出します。
至誠会が推薦制度導入を前理事長が提案したと報道されます。
第三者委員会の報告書が公表されます。
文部科学大臣が大学側に改善計画を策定するよう指導します。
理事長が解任され、理事会が刷新されます。
学長が辞任します。
新学長が就任し、改善報告書を提出する方針を示します。
日本私立学校振興・共済事業団が大学への補助金交付を保留します。
新理事長が選任され、改善計画を公表します。
2025年: A元理事長が背任容疑で逮捕されます。

まとめ

東京女子医科大学の寄付金問題は、大学が教育機関としての公平性や倫理観を大きく損ねた事件であり、社会からの信頼を回復するためには、徹底した原因究明と再発防止策が不可欠です。大学は、今回の問題を教訓とし、健全な運営体制を構築していく必要があります。

出典

(ここに実際の出典情報を追記します。)