22才の別れ Lycoris 葉見ず花見ず物語

『22才の別れ Lycoris 葉見ず花見ず物語』は、2007年の8月18日に公開された日本映画で、監督は大林宣彦です。この作品は、大林監督が手がけた大分三部作の第2作目として位置付けられています。物語は、伊勢正三の名曲「22才の別れ」をテーマに、母娘の二代にわたる恋愛を描いています。特に、母である北島葉子の恋愛と、その娘田口花鈴の恋愛が交錯する構造になっているのが特徴です。

【あらすじ】
物語は2000年代、福岡市から始まります。一人の男、川野俊郎は自宅前の公園で田口花鈴という若い女性に出会います。花鈴の誕生日に彼女が故郷の風習に則ったろうそくを灯す姿から、彼女の母・葉子と自分の過去の恋愛が結びつくことが明らかになります。実は、花鈴の母は川野の若かりし頃の恋人であり、過去の恋の記憶が二人の運命を織り成していくのです。

物語は、1970年代の高校生時代と、現在の二つの時代を交互に描写します。川野は学生時代、内気で冴えない性格でありながら同級生の葉子に密かに恋をしていました。そんなある日、川野は自転車のチェーンが外れた葉子を助けることで親密な関係になります。高校時代には、ヒガンバナが咲く「リコリスの森」で彼女とのデートを重ね、楽しい思い出を作っていきます。しかし、卒業後に二人の進路が異なり、関係はとうとう破局を迎えます。

一方現在の物語では、川野が花鈴と出会い、彼女に引かれつつも、自身の過去の恋愛の影が重くのしかかっています。花鈴は、母の顔を知らず育ってきたことから、母との距離を感じており、彼女に対する思いは複雑です。次第に川野は花鈴の心情に気付き、彼女との関係を深めるものの、会うことを拒む彼女の事情を理解しなければなりません。

この映画には多くの象徴が含まれており、特に赤色のアイテムが物語の随所に登場します。それは愛や希望を象徴する存在として機能します。川野が大学進学とともに東京で生活を始める際、二人はそれぞれの環境で変化を強いられ、それが恋愛にも影響を及ぼします。また、エンディングに向けて、川野は花鈴との関係に向き合い、かつての葉子との思い出と向き合う様になるのです。

キャストには、主役の筧利夫が川野俊郎を、鈴木聖奈が田口花鈴を演じており、自然な演技が観客を物語に引き込む要因となっています。特に、川野の過去に重なる思念や、花鈴の母への憧れが作品全体に深みを与えています。音楽は、伊勢正三の楽曲が使用されており、物語に彩りを添えています。

本作は、2006年に東京国際映画祭に特別招待作品として選ばれ、多くの観客に感動のメッセージを届けました。特に世代を超えた恋愛の描写が魅力的で、思い出深いヒット曲を背景に展開されるストーリーは、多くの観客に愛されています。

この作品は、映画を通じて「愛」と「別れ」というテーマについて真剣に考えさせられる作品です。母から子へ、時を超えて受け継がれる思いが、観る人の心に深く刻まれるでしょう。映画『22才の別れ Lycoris 葉見ず花見ず物語』は、恋愛の複雑さと美しさをいかにするか、その深いメッセージを持った映画なのです。

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