30,000トン型巡視船

30,000トン型巡視船の概要

海上保安庁が計画している30,000トン型巡視船は、約680億円の建造費が見込まれている大型艦です。この新型艦艇は、近年の国際情勢の影響を受ける形で、特に尖閣諸島周辺海域での警備活動における不足を補うことを目的としています。周辺海域では中国政府の公船による領海侵入が増加しており、海上保安庁は新たな巡視船の建造を進めざるを得なくなりました。

背景

2012年9月に発生した尖閣諸島の国有化以降、同地域での中国公船の動きが活発化しました。これにより、日本の領海を守るための対応が求められる中で、海上保安庁は第十一管区海上保安本部に領海警備専従部隊を設立しました。しかし、小型の公船が多数動員された場合には、従来の巡視船では対応が難しいとの指摘があり、状況の厳しさが増しています。

また、台湾有事等の懸念から、海上保安庁は南西諸島を含む地域での住民避難を計画しており、防衛大臣の統制のもとでの訓練も行われています。ここにおいても、広範囲にわたる救助活動が求められているため、大型巡視船の必要性が一層高まっているのです。

設計と機能

30,000トン型巡視船は、海上保安庁が保有している巡視船の中でも最大級であり、既存のれいめい型巡視船の4倍のサイズを誇ります。この艦艇では、ゴムボート数隻やヘリコプター3機を搭載できるスペースがあり、1,500人の住民を収容できるキャパシティも確保しています。また、災害救助や住民避難のために、コンテナ運搬用のスペースを設けています。

ただし、直接的な領海警備を任務とはせず、機関砲の搭載は想定されていません。したがって、この艦艇の主な焦点は、災害対応と住民輸送にあります。専門誌『世界の艦船』では、このような設計が国民保護活動の一環として位置付けられていることを評価しつつ、今後の具体的な検討が求められると考察しています。

今後の展望

2023年度の予算で数千万を設け、設計前の調査を行った結果、2024年3月に報告書が提出されました。その後、2024年6月には、最大2隻の30,000トン型巡視船を建造する方針が確定され、2025年度の予算に計上されています。実用化は2029年度を予定しており、今後の進展が期待されています。これらの取り組みを通じて、海上保安庁はより効果的な国民保護活動を展開することを目指しています。

海上保安庁の新たな艦艇は、ますます複雑化する地域安全保障の中で、重要な役割を果たすことになるでしょう。

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