3776 (アイドルグループ)

3776（みななろ）

概要と結成の背景

富士山の標高にちなんだ名前を持つ「3776」は、静岡県富士宮市を活動拠点とするローカルアイドルユニットです。その始まりは、プロデューサーである石田彰氏のユニークな活動からでした。AKB48に感銘を受けた石田氏は、全国の自治体へ「ご当地アイドルプロデューサー」として売り込みのメールを送付。多くの反応がない中で、富士宮市役所が「市制70周年事業/わが街のAKB」という構想を抱いており、デモテープなどによる選考の結果、石田氏がプロデューサーに迎えられることになります。これが前身となるグループ誕生の契機となりました。

前身グループ TEAM MII

2012年6月、富士宮市の市制70周年事業の一環として、「わが街のAKB」オーディションが開催され、合格者24名によって「TEAM MII」が結成されました。石田氏がプロデュースと楽曲制作を市から受託する形でしたが、活動資金は最初の1曲分のみでした。以降、石田氏が制作した8曲のうち、地元商店街を扱った歌詞が不適切と市役所に判断されお蔵入りとなった1曲を除く7曲が披露されました。地方自治体の資本で誕生した極めて珍しいアイドルグループであり、活動期間は1年限定、物販や遠征にも多くの制約がありました。活動期間中、楽曲への評価はほとんど得られず、ファンからはより典型的なアイドルソングを求める声がメンバーに寄せられる状況でした。

3776への移行と黎明期

TEAM MII解散後も活動継続を希望するメンバーがいたことから、石田氏は市役所と協議し、グループを引き継ぐ形で「3776」を結成。解散直後から数名のメンバーで活動を開始しましたが、正式デビュー前にメンバーの変動がありました。富士山が世界遺産に登録された2013年6月22日、オリジナル楽曲と衣装をまとった7名で正式にデビュー。「私の世界遺産」がお披露目されましたが、この楽曲には「大きな組織に認められようが価値は変わらない」といった強いメッセージが込められていました。しかし、短期間のうちに複数のメンバーが脱退し、同年10月末にはSeason#1としての活動を終了し、Season#2として再始動します。

Season#2、Season#3、そしてソロユニットへ

2013年11月にSeason#2がスタート。研修生チームからの昇格メンバーを加え、4名体制を主軸に活動。TEAM MIIやSeason#1の楽曲に加え、新曲も披露されました。初のCDリリースや県外でのメディア露出などを経て知名度を徐々に上げていきましたが、中心メンバーの脱退によりSeason#2も終了します。

2014年8月からは、井出ちよのさんによるソロユニットとしてSeason#3が始まりました。一時的に他のメンバーや研修生と並行して活動した期間もありましたが、その後は井出さん単独での活動が中心となり、ソロスタイルでの表現を追求することを表明。この時期にリリースされたCD『ラブレター』が全国流通を開始し、音楽配信サイトOTOTOYとの連携も深まります。

音楽性の深化と評価

Season#3以降、プロデューサーの石田彰氏がギター、井出ちよのさんがループマシンなどを使用し即興演奏を行う「3776Extended」というスタイルが確立され、ライブにおける重要な要素となりました。また、商店街のお店とコラボした即興演奏を毎週配信する「水曜元気広場」といったユニークな試みも行われました。

2015年にリリースされたアルバム『3776を聴かない理由があるとすれば』は、多くの音楽評論家やミュージシャンから絶賛され、その独創的なサウンドとコンセプトが高く評価されました。ロマンポルシェの掟ポルシェ氏やケラリーノ・サンドロヴィッチ氏、音楽ライターの南波一海氏、Base Ball Bearの小出祐介氏などが賛辞を寄せており、アイドルシーンにとどまらない注目を集めました。

リンクアイドル構想とその後の展開

2016年には、井出ちよのさんの受験による活動休止を機に、新メンバーを加えたSeason#4としてのグループ復活が発表されました。2017年の復活ライブでは、井出さんと元Peach sugar snowの広瀬愛菜さんがそれぞれ異なる地域（静岡/山梨）を担当し、同時にステージに立たない「リンクアイドル」という独自の活動形態が提示されました。しかし、広瀬さんがリンクモードの担当を退任したため、Season#4は現在休止状態となっています。

広瀬さんの脱退以降は、井出ちよのさん単独での活動が再開され、Season#3Neoとして継続しています。井出さんは、他のアイドルグループとの兼任など、多岐にわたる活動も行っています。

ユニークな活動と楽曲制作

3776は、CDや配信での音源リリースに加え、「旅ふぉと」と呼ばれる旅先で撮影された写真の販売や、自動返信機能付きのLINE公式アカウントなど、多角的な展開を見せています。また、楽曲制作においては、初期の仮歌にボーカロイドが使用されるなど、プロデューサー石田氏の出自や興味が反映されています。前身であるTEAM MII時代の楽曲「わかってよねえ先生」は、メンバーが学校行事を休んだことへの苦情に対する一種のアンサーソングとして制作されたエピソードも知られています。

このように、3776はその結成の経緯から活動スタイル、音楽性、メンバー構成に至るまで、常に独自の道を歩み続けており、ローカルアイドルという枠を超えて多方面から注目される存在となっています。

もう一度検索