39108 (アルバム)

39108

『39108』（サンキュー・ヒャクハチ）は、日本のミュージシャン、吉井和哉が2006年10月4日に発表した通算3枚目のソロアルバムです。この作品は、彼が自身の名前である「吉井和哉」名義で初めてリリースしたアルバムとしても重要な位置を占めています。

概要と制作背景

前作から約1年7ヶ月の期間を経て届けられた本作は、リリースに先立つ同年の夏、吉井が全国各地の主要なロックフェスティバルに多数出演した時期に制作が進められました。これらのフェスでは、当時まだ未発表であった本作に収録される新曲の一部が披露され、ファンの期待感を高めました。

タイトルに込められた意味

アルバムタイトルの『39108』という数字には、吉井和哉自身のパーソナルな思いが深く込められています。この数字は、リリース当時の彼の年齢「39」と、自身の誕生日である10月8日を示す「108」を組み合わせたものです。さらに、39は日本語の「サンキュー（ありがとう）」という言葉を、108は仏教において人間の苦しみの原因とされる「煩悩」の数を想起させます。吉井は、30代の終わりという節目にあたり、これまでの人生で自身を苦悩させてきた煩悩に対してさえも、あえて感謝の気持ちを伝えたいという、彼ならではのユニークな視点と心情をこのタイトルに託しました。

リリース形態

本作は、様々なファンのニーズに応えるべく、当時としては珍しい多様な形態で同時リリースされました。標準的な通常盤に加え、プロモーションビデオやレコーディングの様子を収めたDVDが付属する初回限定盤、音質にこだわるリスナー向けのアナログ盤、そして初回限定盤のコンテンツに加え、前年のツアー「MY FOOLISH HEART」のライブ映像DVDと豪華写真集が同梱されたプレミアム盤が用意されました。中でもプレミアム盤は10800セットという限定生産で、高い希少価値を持っていました。

収録曲と関連エピソード

本作には多数の楽曲が収められており、その中にはリリース前から注目を集めた楽曲も含まれます。例えば「WEEKENDER」と「BELIEVE」は、アルバム発売に先駆けて先行配信されました。「BELIEVE」はテレビ朝日系の音楽番組『ミュージックステーション』でも披露され、話題となりました。また、「BEAUTIFUL」は本作からのシングル曲として発表されています。

さらに、このアルバム制作にまつわる興味深いエピソードも存在します。収録曲「恋の花」には、本作とは歌詞やアレンジが異なる原曲が存在し、これは後の2009年のツアー「宇宙一周旅行」で演奏され、ベストアルバム『18』にその音源が収録されています。また、2009年リリースのアルバム『VOLT』に収録された楽曲「SNOW」は、本作のリリース後に行われたツアー中に生まれた曲ですが、初めてライブで披露されたのは2008年のライブイベント「YOSHII BUDOKAN 2008」でした。極めつけは、2015年にシングル化された楽曲「クリア」です。実はこの曲も『39108』の制作時期には完成していたそうですが、そのあまりにポップな曲調が当時のアルバム全体の雰囲気に合わないと判断され、収録が見送られたという裏話が明かされています。

参加ミュージシャン

本作の制作には、吉井和哉自身のボーカルやギター、ベース、キーボードといった多彩な演奏に加え、国内外の著名なミュージシャンが多数参加しています。ギタリストのジュリアン・コリエル、ベーシストのクリス・チェイニーやジャスティン・メルダル・ジョンセン、ドラマーのジョシュ・フリーズやビクター・インドゥリゾーなど、実力派プレイヤーたちの演奏が、アルバムの世界観を深く彩っています。

総括

『39108』は、吉井和哉がソロアーティストとして自身の名を冠し、30代の締めくくりに放った、自身の内面と率直に向き合った意欲作です。タイトルに象徴される多層的なメッセージや、多様なリリース形態、そして後の作品やシングルとして結実する楽曲のルーツが隠されている点など、聴き込むほどに発見のある、ファンにとって重要な作品と言えるでしょう。

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