4チャンネルステレオ

4チャンネルステレオの概要

4チャンネルステレオ（Quadraphonic sound）とは、音楽をより立体的に楽しむための音響システムであり、通常の2チャンネルステレオにリアスピーカーを追加した仕組みです。この方式は主に1970年代に登場し、いくつかの異なる記録再生法が提案されましたが、最終的には様々な理由により市場から姿を消しました。

方式の分類

4チャンネルステレオは大きく二つの方式に分類されます。ひとつは「ディスクリート方式」で、4つの音声信号を完全に分離して記録・再生します。もうひとつは「マトリックス方式」で、音声信号を混合して記録し、再生時にそれを分離して再生する方法です。これらの方式はそれぞれの技術的な特性と実用性が異なり、ユーザーのニーズに応じた多様性を持っていました。

ディスクリート方式

ディスクリート方式では、個々の音声信号をそれぞれ独立して処理します。例えば、磁気テープに4トラックを使用して録音され、再生も独立して行われます。この方式は従来の録音方法に基づき、数少ない音楽ソフトが制作されましたが、完全な分離に基づくレコードの登場は、後に技術が進化するまで待たねばなりませんでした。

マトリックス方式

一方、マトリックス方式では、複数の音声信号を混合して記録します。この方式の中には、様々な技術が含まれており、特にCBSのSQ方式とシャイバー方式が影響力を持っていました。これらの方式は、通常の2チャンネル再生装置で再生可能であるため、デモテープなどの充実したソフトが供給されていた点が特徴です。

CD-4の登場

1970年、日本ビクターが開発したCD-4システムは、4チャンネルを完全に分離して扱うディスクリート方式の一例です。このシステムは、通常のステレオレコードと互換性がありつつ、追加の高周波数帯域を利用して4チャンネル音声を記録します。特に、CD-4方式は高音質な音楽再生を目指し、多くのオーディオ愛好者に支持されました。

しかし、CD-4システムを最大限に活用するためには、特別なカートリッジやレコード針が必要であり、一般的な再生装置とは性能に差があったため、普及には限界がありました。

市場の消滅と技術の遺産

1970年代に登場した4チャンネルステレオは、一時的に注目を浴びたものの、規格の混乱や外部環境の影響により短期間で市場から姿を消しました。特に、オイルショックが影響し、ハードウェアの製造が1979年度を最後に終了しましたが、そこで得られた技術は後のオーディオシステムに影響を与え、サラウンドシステムの発展につながりました。

また、CD-4システムが導入した高周波数記録技術や、ノイズリダクション技術などは、現在のオーディオ技術においても重要な技術基盤として評価されています。特に、ドルビーB規格に関連するテープノイズリダクション技術は、CD-4システムから派生したものです。

まとめ

総じて、4チャンネルステレオは一時代のトレンドであり、その後のマルチチャンネルオーディオ技術に多大な影響を与えました。市場からは消えましたが、その技術的な遺産は現在でもオーディオ業界に健在です。

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